知り合いのところでおいしいコーヒーを飲んだので、
今日はコーヒーについての本を紹介します。
猫実珈琲店主ケーコさんによる、コーヒーってものについてのはじめの一歩。
コーヒー豆とはいうけれど、実際はピーナッツみたいな豆ではなく、
コーヒーノキになる実の種なんだ、というあたりから始まって、
売られているようなコーヒー豆になるまでの過程や淹れ方、味の違いなどが
わかりやすく描かれていますが、1番印象に残ったのは、
苦いなと思いながらなんとなくコーヒーを飲んでいて、40歳くらいでふとおいしいと
感じるようになった、というところです。
コーヒーに限らず、なんとなく摂取していたもののよさに気づく。
そんなことが人生にあってほしいと思います。
ところでこのお店がある猫実は、ねこざねといいます。
初見では読めませんでした…
林丈二の本で、猫が実のようになっているところはないかと探し歩いていたところです。
ここに出てくるコーヒーは、商店街のはずれにある喫茶店「風見鶏」のもの。
主人公に言わせると、涙ぐんでしまうほどのうまさだそうです。
ここにはコーヒー豆をかじるのが好きな猫、カフェオレもいます。
この小説は、父親の転勤のため、いとこ姉弟と同居することになった高校生の勝利が、
周りの人物といろんなかたちで関わり合い、変化しながら成長していく話です。
最初のあたりは10年以上前に読んだ覚えがあるのだけど、文庫で19巻分を通して
読んだのは今回が初めてで、読み終えた時には満足感がありました。
自信が過信になって失敗してしまったり、
どうして自分の気持ちをわかってくれないのと苛立って反省したり、
いいところもそうでないところも、いろんな面があって少しづつ変わっていく、
キャラじゃなく人間を描いているって感じがします。
ラストシーンは、映画のような情景がうかびました。
完結するまでの26年間のうちには作者の環境もいろんな変化があったようで、
読者であるこちらもいろいろと変わったのですが、読めてよかったと思う本でした。
同じコーヒーでも、吉田篤弘「ソラシド」に出てくるのは、まずいコーヒーです。
幻のレコード、行方不明のダブルベース。「冬の音楽」を奏でるデュオ〈ソラシド〉。失われた音楽を探し、もつれあう記憶と心をときほぐす、兄と妹の物語。
1986年と、その26年後を行き来しながら
兄は妹と「ソラシド」という名前の女性デュオを探します。
レコード、日記、ダブルベース。
失われたと思っていたものがふっと息を吹き返すような話で、
別にコーヒーの話ではないのですが、
「汗の味がする名ばかりのブラジル」「得体の知れないドス黒ブラック」
「泥水みたいなブレンド」のような、兄の飲んできたまずいコーヒーについての
文章が心に残りました。