唐桃の読んだもの。

読んできた本や漫画を、徒然に紹介していきます。

ミステリ、ホラー、ノンフィクション。ビレッジセンター「~を書く!」シリーズを読みました。

共通のインタビュアーが、いろんな人の話を聞く本が好きです。

複数の人の話を連続させることで、時代の共通点のようなものを感じます。

今日は、ビレッジセンター出版局から90年代後半に出版された

インタビューシリーズを紹介します。全4冊なようですので、そこから3冊を。

Wikipediaによるとこの出版社は、技術評論社から独立したソフトウェア開発会社で、

その一部で出版もしていたようです。

 

千街晶之「ミステリを書く!」

 

ここでのインタビュアーはミステリ評論家で、今もたくさんのミステリの解説を書いています。

出版された当時と今、20年以上を経ることによる変化と、

作家の一本筋の通ったようなところを感じました。

 

テキストを論じることを放棄して作家の人生のアウトラインだけつまんで、作品まで分かったようなような気になるのは勘違い(京極夏彦

僕は「本物みたいなの」が好きなやつで、相棒は本物が好きだった。だから相棒は本物を作ろうとしたんだけど、僕はマガイモノを作ろうとした(井上夢人

ホモセクシャルの男性が書いたと思ったという人が結構多いんです。男性か女性か分からないふうでいたかったので、それは嬉しいような(恩田陸

一番読んでいたジャンルであるので、今でも好きな著者が多く、興味深いところがあちこちに書かれていました。大極宮が作られた理由にも触れられています。

 

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――「今までになかったようなインタビュー本をつくりたいんです!」思わず「よっしゃ!」とガッツ・ポーズを取りたくなるような願ってもない依頼であった。結果的に本書は、「ホラー」という今もっとも熱い注目をあつめるジャンルについて、その最前線に立ってホラーシーンを先導する作家たちが、銘々のたどってきた奇跡を振り返り、実作者の立場から体験的ホラー観を率直に披瀝するという、かつてないスタイルの贅沢なガイドブックとなった――(東雅夫「あとがき」より)

 

インタビュアーの東雅夫アンソロジストとしても有名ですから、

質問するだけではなく、会話がはずむ対談みたいなところもあって、

特に井上雅彦との回は吸血鬼vs退治人でした。

巻末には日本ホラー小説年表も載っていて、タイトルを眺めていると

あれはおもしろかったな、あの本とこの本は同じころに書かれたんだな、など

いろんなことが想起されました。

 

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また、藤吉雅春をインタビュアーにした「ノンフィクションを書く!」は

1999年の段階で「あぶらが乗っているノンフィクションの書き手10人」

へインタビューしたものです。

取材の中で劇的な出会いがあったとしても

作者がどこで生まれ、何をしてきたかと無関係ではいられない。

記事が書かれるまで、本が出るまでに、何があったのか。

書いたものはどう残るか、ということも考えました。

 

書かれている中にはもう亡くなっている人もいます。

ここに書かれている人の本は、ほとんど読んだことがありませんでしたが、

読みたいと思う本がたくさんありました。

 

今はもう注文できないので、図書館などでみつけたらぜひ、とお勧めしたい

シリーズでした。

南極についての本を読みました。~中山由美「北極と南極のへぇ~ くらべてわかる地球のこと」、西村淳「面白南極料理人」

2022年、今年もおいおい記事を書いていこうと思います。

1月29日が南極の日なので、今日は南極についての本を。

 

千葉に住んでいたとき、サッポロビールの工場見学に行ったのですが、

コラボツアーとして、「SHIRASE5002」の見学をしたことがあります。

初代観測船の宗谷、2代目のふじに次ぐ、3代目南極観測船なんですって。

www.sapporobeer.jp

床にくぎ付けにされたテーブルは海が荒れたときに飛んでいかないため、

散髪室や医務室は長期にわたる移動のためと、

ちょっと不思議に思うことにはどれも理由があって、

観測隊の方々は、ほんとに長い時間船に乗っていたんだと思いました。

 

2代目の砕氷船として、昭和40年から18年間活躍していたふじについては、

この漫画で知りました。

www.walkerplus.com

 

中山由美「北極と南極のへぇ~ くらべてわかる地球のこと」

は、北極圏と南極大陸について全然知らなくても楽しめます。

www.kids-event.jp

今でも観測隊として南極に向かっている人がいて、そこで暮らしている人がいるんだな~、と世界の広さを思います。

写真も多く載っていますが、私が印象に残ったのは、隕石を拾ったというセールロンダーネ山地。

南極大陸の中でも、数少ない露岩地区だそうです。

ツイッターでは南極の写真や関連情報など、見せてくれるのでそちらも楽しみ。

www.asahi.com

新聞記者である人が書いた本では、

「南極、行っちゃいました」も面白かったような。

カラフルなイラストがたくさん載っていたのですが、内容は

ほとんど覚えていないので、機会があったら読み返したい一冊です。

 

そして南極と言えば、のこの一冊。

面白南極料理人(新潮文庫)

面白南極料理人(新潮文庫)

 

西村淳「面白南極料理人」

ウイルスさえも生存が許されない地の果て、南極ドーム基地。そこは昭和基地から1000kmかなた、標高3800m、平均気温-57℃、酸素も少なければ太陽も珍しい世界一過酷な場所である。でも、選り抜きの食材と創意工夫の精神、そして何より南極氷より固い仲間同士の絆がたっぷりとあった。第38次越冬隊として8人の仲間と暮した抱腹絶倒の毎日を、詳細に、いい加減に報告する南極日記。

 

雪を溶かして水を確保するところとか、お正月やイベントの様子とか、男子校でわいわいしているような感じがありました。

南極に集まった人はそれぞれの分野のプロフェッショナルなんだけど、

だから食べなくてもいいわけではないし、生活するためにみんなで協力しないといけない。

というか、協力しないと生きていくことも難しい。

過酷な環境下でモチベーションを保ち続けることの大切さも、知りました。

文庫で3頁に渡る、みんなありがとうの文章がいいですね。

超能力要素のあるミステリーを読みました。~大山誠一郎「ワトソン力」、西澤保彦 「完全無欠の名探偵」、井上夢人「風が吹いたら桶屋がもうかる」

「例えば――手品はオカルトではないね?」

「当たり前だ。あれは見せ物じゃないか。不思議に見えるが――種がある」

「そう。手品には種がある。種があると知っていて僕等は手品を楽しむ。

 種があることについて非難はしない。じゃあ超能力はどうだね?」

                          京極夏彦魍魎の匣」より

 

ということで、今日は超能力の出てくる話を。

大山誠一郎「ワトソン力」

 

目立った手柄もないのに、なぜか警視庁捜査一課に所属する和戸宋志。行く先々で起きる難事件はいつも、居合わせた人びとが真相を解き明かす。それは、和戸が謎に直面すると、そばにいる人間の推理力を飛躍的に向上させる特殊能力、「ワトソン力」のおかげだった。殺人現場に残されたダイイング・メッセージ、雪の日の不可能犯罪、バスジャックされたバス内の死体……。今日も和戸を差し置いて、各人各様の推理が披露されていく!

www.webdoku.jp

自分でも謎を解いてみたくなる(だけど解けない)連作ミステリーです。

文章や図で、目の前にはっきり状況が書かれているのに解けなかった~、

という感覚はクイズですね。

 

主人公和戸は、自分がどんな能力を持っているか自分でわかっているのですが、

似た能力を全然自覚していないのが西澤保彦「完全無欠の名探偵」です。

異能の名探偵が挑む謎の連鎖。
殺人の動機、不倫に隠された秘密。精緻な論理で明かされる意外な真相。

遠く離れて暮らす孫娘りんのため、大富豪がお目付け役に送り込んだ青年山吹みはる。「誰も嘘をつけないのよ、きみを前にすると」彼が短いあいづちを打つだけで、人々が勝手に記憶の糸を辿り、隠された意外な真相へと導かれる。精緻なロジックで事件が分析、推理されていく究極のアームチェア探偵新登場。

 

西澤保彦の小説には、

主人公が同じ一日をくりかえす「七回死んだ男」

違う生き物の体に乗り移る「いつか、ふたりは二匹」など特殊な設定の小説も多いです。

そしてこの人には、超能力が実在する世界での超能力問題秘密対策委員会、

略してチョーモンインシリーズもあるのですが

これはフィナーレまで読めるのかなあ、とちょっと不安です。

もう15年新作が出てないんですよね・・・

 

と、書いていて思い出したのは

井上夢人の「風が吹いたら桶屋がもうかる」です。

ここに出てくるのは、役に立たない超能力。

books.shueisha.co.jp

bunko.shueisha.co.jp

読んだのは10年以上前だけど、面白かったことは覚えています。

毎回小動物をイメージさせる美女が出てきたはず。

 

役に立たないけど、他の人にはない能力といえば、

高野雀の「しょうもないのうりょく」もそうですね。

「書類を崩さず置ける」「ポスターをまっすぐ貼れる」など、

誰もが取るに足らない能力、異能を持っている世界での日常が描かれていて、

試し読みがおもしろかったので今度買います。

和田誠の関わった本を読みました。~「ほんの数行」、「もう一度倫敦巴里」、平野レミ「新版 平野レミの作って幸せ・食べて幸せ 」

12月19日まで、東京オペラシティ和田誠展が行われています。

wadamakototen.jp

それがあんまり楽しかったので、

お近くで行われましたらぜひ、とおすすめしたいです。

これから熊本、新潟、北九州、愛知と巡回するそうですよ~。

 

illustration-mag.jp

 

私が初めて和田誠の絵を見たのは、児童書の表紙だったと思います。

寺村輝夫「ぼくは王様」か、星新一の文庫本

なので、この人はイラストレーターだと思っていたのですが、

検索してみたら想像以上にたくさんの本に関わっていたことに驚きます。

そのなかでも、装丁についてはこちらの本がおもしろかったです。

「ほんの数行」というタイトルは「たった数行」でもあり、「本の中の数行」でもある。ぼくが読んだ本の中の数行を紹介して、あれこれ語ろうというわけだ。  はじめは「ほんの一行」にしたかったのだが、この雑誌のページは一行十五字なので、十五字で収まる文章を探すのは苦労するだろうと思い、「数行」にした。  ぼくはたいした読書家ではないが子どもの頃から数えれば、かなりの本を読んでいる筈だ。その中から数行を選ぶのも難儀のような気がするから、自分が装丁した本に絞ることにした。それだって決して少なくはないのだが、まあやってみましょう。

 

面識があってもなくても、著者に敬意をはらっていることが伝わりました。

本によっては模型をつくったり、石に絵を描いて写真を撮ったり。

装丁ってすごいな~、と思いました。

和田誠が表紙を描いた横溝正史「真説 金田一耕助」読んでみたいです。

 

www.nikkan-gendai.com

 

「もう一度倫敦巴里」は、パロディ満載の1冊です。

1977年に出版された「倫敦巴里」を2017年に再編集したそうです。

もし~が「雪国」の冒頭を書いたら。

もし~が「うさぎとかめ」を映画にしたら。

軽やかに楽しい本でした。

bunshun.jp

 

そしてこちらのインタビューを読んで、平野レミの本も読みたくなりました。

www.1101.com

新版 平野レミの作って幸せ・食べて幸せ - 株式会社 主婦の友社 主婦の友社の本

 

この本にはレシピのほかにも、エッセイも載っています。

和田誠のイラストもいっぱい。

にんにくを具に使ったカレーなど、作ってみたくなりました。

好きな小説10選  

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選」より。

アイウエオ順に並べてみます。

 

有栖川有栖「ダリの繭」

池澤夏樹「マシウス・ギリの失脚」

伊坂幸太郎「あるキング」

岡田淳「こそあどの森の物語」

恩田陸「ドミノin上海」

クラフト・エヴィング商會「星を賣る店」

斉藤洋「白狐魔記」

村上春樹ねじまき鳥クロニクル

森見登美彦夜は短し歩けよ乙女

吉本ばなな「アムリタ」

 

有栖川有栖「ダリの繭」

 

サルバドール・ダリの心酔者の宝石チェーン社長が殺された。現代の繭とも言うべきフロートカプセルに隠された難解なダイイング・メッセージに挑むは推理作家・有栖川有栖と臨床犯罪学者・火村英生!

 

不可解な謎には合理的な答えがあって、

犯人はこの人しかいないという謎解きの楽しさがありました。

そしてラストシーンには切り開かれるような痛みを感じました。

 

無重力を体感できるフロートカプセルというものが出てきて、

初めて読んだ時には不思議なものがあるんだなあ、と思いましたが

アイソレーションタンクとも言われているものでしょうか。

 

池澤夏樹「マシウス・ギリの失脚」

 

舞台は、毎朝、毎夕、無数の鳥たちが飛びまわり、鳴きさわぐ南洋の島国、ナビダード民主共和国。鳥たちは遠い先祖の霊、と島の人々は言う。
日本占領軍の使い走りだった少年が日本とのパイプを背景に大統領に上り詰め、すべてを掌中に収めたかに見えた。だが、日本からの慰霊団47人を乗せたバスが忽然と消え、事態は思わぬ方向に転がっていく。
善良な島民たちの間で飛びかう噂、おしゃべりな亡霊、妖しい高級娼館、巫女の霊力。それらを超える大きな何かが大統領を飲み込む。
豊かな物語空間を紡ぎだす傑作長編。谷崎賞受賞作品。

 

読み終わるのが惜しくなるような小説です。

ナビダード民主共和国は架空の国なのですが、歴史や文化があんまり具体的に描かれているので、

こんな国があってもいいんじゃないか、むしろないほうがおかしいんじゃないか、

という気分になりました。

 

伊坂幸太郎「あるキング」

 

山田王求(おうく)。プロ野球チーム「仙醍(せんだい)キングス」を愛してやまない両親に育てられた彼は、超人的才能を生かし野球選手となる。本当の「天才」が現れたとき、人は“それ”をどう受け取るのか──。群像劇の手法で王を描いた雑誌版。シェイクスピアを軸に寓話的色彩を強めた単行本版。伊坂ユーモアたっぷりの文庫版。同じ物語でありながら、異なる読み味の三篇すべてを収録した「完全版」。

 

こんな小説は、読んだことがありません。

後味はいいけれど、単純にハッピーエンドとはいえません。

「SOSの猿」とも似た雰囲気があると思います。

 

岡田淳「こそあどの森の物語」

 

「この森でもなければ その森でもない あの森でもなければ どの森でもない
こそあどの森 こそあどの森」

 

www.ehonnavi.net

小学生のときに知って、折に触れては読んでいたシリーズが完結しました。

誰ともなく、見届けたぞという気持ちになりました。

 

奥泉光「鳥類学者のファンタジア」

 

謎の音階をめぐって、時空を超える旅が始まる。
不可思議な音階がジャズピアニスト・希梨子を時空を超える冒険に巻き込んでいく。現代から第二次大戦末期のドイツへ……。解説者による、本作品のためのオリジナル楽譜も収録。(解説・山下洋輔

 

たとえば主人公、希梨子のセッション。

弟子志望の佐和子ちゃんとのやりとり。猫との交流。

緊迫している状況でもどこかのんきな語り口がおもしろく、

どこから読んでも楽しめます。

 

恩田陸「ドミノin上海」

 

幻の至珠「蝙蝠」が香港から上海に密輸された。無事に密輸を成功させ、オークションで高値で売り抜けることを目指す骨董商、蝙蝠の行方を追う香港警察の攻防は熾烈を極める。
物語の舞台となるのは上海の一流ホテル「青龍飯店」。そこにはゾンビ映画を撮影中のご一行、スピード違反で上海警察に追われる寿司配達人、アートフェアに呼ばれた高名な彫刻家ら多様な人々が集まった。さらには上海動物公園から逃げ出したパンダに、成仏できない死んだイグアナもやってきて……。

もつれ合う人々、見知らぬ者同士がすれ違うその一瞬、運命のドミノが次々と倒れてゆく。
抱腹絶倒、スピード感溢れるパニック・コメディ。

realsound.jp

寝る前に読み始めたのですが、読み終わるまで眠れませんでした。

 

クラフト・エヴィング商會「星を賣る店」

 

この展覧会はうそかまことか――。クラフト・エヴィング商會の棚おろし的展覧会公式図録。文学、デザイン、アートを軽々と渡り歩く同商會の魅力と新たな世界が満喫できる約3年ぶりの新刊。

 
これはまず、世田谷文学館で行われた展覧会の図録です。
つまり、1つ1つが作品で、新たな視点を示すアートで、デザインです。
文章は作品の説明ですが、小説のようで、エッセイのようで、
これまで書かれた小説の、あるいはこれから書かれる小説の、プロローグのようでした。
 

斉藤洋「白狐魔記」

 

人間はなぜ殺しあうのか。源義経北条時宗楠木正成織田信長…。不老不死の術を習得した仙人きつね・白狐魔丸は、その答えを探して歴史上の人物との出会いをかさねます。タイムファンタジーの形をとりながら、日本史の面白さにせまる人気シリーズ。

shirobito.jp

2019年、7年ぶりの新刊「天保の虹」が出版されました。

主人公のきつね、白狐魔丸は歴史的な件に関わることはなく、

少しだけ人と交わって、いろんな人間を知っていく。

そのさっぱりした距離感が、なんとも心地よいです。

 

村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」

 

「人が死ぬのって、素敵よね」彼女は僕のすぐ耳もとでしゃべっていたので、その言葉はあたたかい湿った息と一緒に僕の体内にそっともぐりこんできた。「どうして?」と僕は訊いた。娘はまるで封をするように僕の唇の上に指を一本置いた。「質問はしないで」と彼女は言った。「それから目も開けないでね。わかった?」僕は彼女の声と同じくらい小さくうなずいた。(本文より)

 

初めて読んだ村上春樹が、これです。

ページをめくって、よくわからなくて、それでも読んで、読み終わったら

また読みたくなって…という小説も、初めてだったかもしれません。

 

www.excite.co.jp

森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」

 

黒髪の乙女にひそかに想いを寄せる先輩は、京都のいたるところで彼女の姿を追い求めた。二人を待ち受ける珍事件の数々、そして運命の大転回。山本周五郎賞受賞、本屋大賞2位、恋愛ファンタジーの大傑作!

 

世界が繋がっている感じが好きです。

先輩の必死の努力は黒髪の乙女に伝わらず、乙女の楽しい冒険を先輩は知らない。

ぬっとあらわれるのはきらびやかな電車のようなものかもしれず、

激辛鍋の我慢大会かもしれず。

京都に住んでいないことを、惜しく思ってしまいました。

文庫版の解説を羽海野チカが描いているのですが、それがなんともステキです。

 

吉本ばなな「アムリタ」

 

妹の死。頭を打ち、失った私の記憶。弟に訪れる不思議なきざし。そして妹の恋人との恋──。流されそうになる出来事の中で、かつての自分を取り戻せないまま高知に旅をし、さらにはサイパンへ。旅の時間を過ごしながら「半分死んでいる」私はすべてをみつめ、全身で生きることを、幸福を、感じとっていく。懐かしく、いとおしい金色の物語。吉本ばななの記念碑的長編。

 

www.gentosha.jp

アナザーワールドでのだらだらした日常を描きたかった。オカルト精神というかニューエイジ精神が現実に負ける様を描きたかった。こわれた家族が再機能しはじめるのも書きたかった。きょうだいについて書きたかった。三島由紀夫の「美しい星」みたいな大まじめに狂った家族が書きたかった。みんな足してしまったのです。

「B級BANANA」岡崎京子からの質問より

「同じ家に長いこといなければ、たとえ血がつながっていても、

なつかしい風景の一つとして遠ざかってゆく」

というところは、私の家族観になっていると思います。

 

おすしについて書いている本を読みました~小西英子「のりまき」、おいしい文藝「はればれ、お寿司」

小西英子「のりまき」がおいしそうだったので、今日はお寿司についての話を。

この絵本は、まきすをしくところから始まるのですが、

あまりにも普段使わないものだから、あれはなんていうんだっけ・・・す、すのこ・・

ちがう、すまき・・・ああ、まきすだ! と、言葉がなかなか出てきませんでした。

 

まきすの上にノリをしき、ご飯をひろげ、たまごをのせ、キュウリをのせ・・・と、

あなごにしいたけ、エビまではいった豪華なのりまきをつくる絵本です。

1つ1つの食材がリアルで、自分も作っているような気分になります。

 

「きのう何食べた?」の15巻では、手巻き寿司を作る回がありました。

友人の家に招待されたケンジと史朗が、巻いては食べていきます。

漫画で寿司、といえばYAWARA! でも、印象に残るところがありました。

手元にないので記憶で書けば、

主人公である猪熊柔の同級生が寿司職人の見習いをやってたんだけど、

先輩に腕をけなされて腐っていたところにテレビで柔の活躍を見て、自分もやらねばと

奮起するシーンがあったのですが、その練習に使っていたのがおからとこんにゃくだっ

たのです。

 

おいしい文藝「はればれ、お寿司」

 

贅をつくした江戸前鮨、食べるほどにたのしい回転寿司、手作りのちらし寿司、郷土のおすしなど、「すし」にまつわるエッセイ32篇。世界中から愛される寿司の真髄にふれるアンソロジー

 

こうじゃなきゃいけない、というこだわりは出てくるけれど、

それをどこで出してくるかの違いが、おもしろかったです。

外で食べた寿司がおいしくなかったとして、それをお店に言うのはアリか。

お店があんまりきれいじゃないことは、どこまで味にかかわるのか。

もちろん正解があるわけではなく、読んでいる方はそこから書き手の価値観を見ます。

 

北大路魯山人の、海苔はこうで酢はこうで米はこうで魚介はこうでないと上等なすし

じゃない、というような文(握り寿司の名人(抄))の次に、

総武線が頭の上を通るガード下のすし屋とか、歌舞伎町にある回転ずしについての

種村季弘の文(東京すし今昔噺)があるところがよかったです。

北大路魯山人って、なんだか美味しんぼみたいなことを言ってるなあと思ったら、

実際に海原雄山のモデルだったんですね。

kariyatetsu.com

そんな食通好みの寿司はもちろんそれでいいのだけど、

初めて来る人でも満足できる、というのも大事ですね。

日本語が話せなくても、MAGUROやKANPYOUがどんなものかわからなくても

目の前にそのものが流れてきて、おいしそうならすぐに食べれるすし屋のよさ。

なんだか食べたくなってきました。

あずきやあんこの本を読みました。~荒井真紀「あずき」、おいしい文藝「ずっしり、あんこ」、芝崎本実「あんこのことがすべてわかる本  つくる、食べる、もてなす」

10月13日は豆の日だと、最近知りました。

mame-no-hi.jp

大豆は前回の記事で紹介したので、今回はあずきを描いている本を紹介します。

荒井真紀「あずき」

 

おめでたい席には「お赤飯」、お正月の「お汁粉」、ひな祭りの「よもぎだんご」、こどもの日の「かしわもち」など様々な行事で、あずきを使ったお菓子や料理が食べられてきました。なぜ、おめでたい席に、あずきを食べるのでしょうか? それは、あずきの赤い色にある思いが込められているからなのです。あずきの生長を見ていきながら、その赤い色が出来るまでを観察し、そこに込められた思いに迫ります。

 

あずきという植物について、1から知ることができる絵本です。

植えた種が、地面の中でどう育っていくか。

葉や花、さやとその中身が、どんな風に変わっていくか。

少しづつ違うあずきを、一粒一粒描いています。

 
 
そしてあずきを煮て、砂糖をくわえるとあんになります。

芝崎本実「あんこのことがすべてわかる本  つくる、食べる、もてなす」

 

365日あんこを楽しみたい人向けの本です。

あんこ歳時記やレシピに歴史、

姫路にあるあずきミュージアムや製あん会社の訪問レポに、

都道府県のあんこを使ったお菓子紹介など、もりだくさん。

著者は日本各地のお団子の食べ歩きをライフワークにしているのだとか。

www.tokaiedu.co.jp

 

金萬って食べたことある! 名前は知ってたけど、空也もなかって有名なんだ、

やっぱりずんだは紹介されるよね、シャトレーゼの本社って山梨にあるんだ、

大手まんぢゅうってDPZに出てたな・・・など、刺激されるところがたくさんありました。

dailyportalz.jp

そしてそんな、1人1人のあんライフが集まっているのはこちらです。

おいしい文藝「ずっしり、あんこ」

 

おはぎ、しるこ、ぜんざい、羊羹、たい焼き、草餅、桜餅、だんご。愛してやまない「あんこ」に関するエッセイを集めた「おいしい文藝」シリーズ第7弾。お好みは「こし」「つぶ」さて、どっち?

 

芥川龍之介の「しるこ」からはじまる一冊。

どうでも「こしあん」でなければいや、という林望のあとに

誰になんと言われようと私は「つぶあん派」という宮沢章夫が並ぶところなどおもしろく、

安藤鶴夫の「たいやき(抄)」など、この本をめくらないと読まなかったんじゃない

かと思います。ふとしたきっかけで長いつきあいとなるめぐりあわせと、

江戸弁というのか、べらんめえ口調が小気味よい文章でした。

読んだことのある人の文章でもまた違ったように読めて、アンソロジーはこういう

出会いがあるからおもしろいよなあ、と思いました。