唐桃の読んだもの。

読んできた本や漫画を、徒然に紹介していきます。

10月31日なので。~アガサ・クリスティー「ハロウィーン・パーティ」

 

推理作家のオリヴァ夫人を迎えたハロウィーン・パーティで、少女が殺人の現場を目撃したことがあると言いだした。パーティの後、その少女はリンゴ食い競争用のバケツに首を突っこんで死んでいるのが発見された。童話的な世界で起こったおぞましい殺人の謎を追い、ポアロは推理を展開する。

 

上のあらすじに出て来る「リンゴ食い競争」とは、

アップル・ボビングというそうです。

リンゴを大きなたらいの中に入れて、手を使わずに口でとる遊びで、

ハロウィンではおなじみのものなんだとか。

crd.ndl.go.jp

洋画や児童書などでもときどき見かけたことがありますが、

そんな名前だったんですね。

 

この本、2023年には映画の原作にもなっていたそうです。

www.20thcenturystudios.jp

楽しいパーティから一歩はずれたら惨劇となり、

あるいは人ならざる者の世界に迷い込む。

日が沈むのがずいぶん早くなってきたこのごろ、帰り道にはお気を付けください。

 

10月と言えば、こちらも。

ずいぶん前に読んだきりなので、また再読したいですね。

10月はたそがれの国 - レイ・ブラッドベリ/中村融 訳|東京創元社

高知に行きました。~左右社編集部「雨のうた」、小林銅蟲「めしにしましょう 出張食い倒れ編」

高知県に行きました。

清流で有名な四万十にも足を延ばしたのですが、

今回は雨が続いたので、また違う時期にも行ってみたいものです。

 

観光案内書に置かれていた地域の広報誌には、四万十出身の歌人岡本真帆

短歌アンソロジー「雨のうた」について文章を書いていました。

これは、現在の歌人100名による100首をおさめてある本で、

むこうがわから雨音が聞こえてくるようでした。

「月のうた」「海のうた」など、シリーズになっています。

 

場所が違えば食の習慣も違うもので、

JAなどでも初めてみるものが売っていて楽しめました。

小林銅蟲「めしにしましょう 出張食い倒れ編」の舞台も高知なので、

食べたいものが一気に増えた気がします。

comic-days.com

www.yamaken.org

漫画家の主人公が、「食と農のジャーナリスト」やまけんちゃんにつれられて

高知の人や食べ物と、思いもよらない出会いをしていきます。

紹介されているものがどうすごいのか、おいしいのかを教えてくれるので、

興味がわいてくる漫画です。

これからもいろんなところにいってほしいですね。

 

多くの漫画家が生まれていることから、こんなイベントもあります。

mangaoukoku-tosa.jp

とよ田みのる「これ描いて死ね」にも出てきました。

www.asahi.com

なかなか高知までは距離がありますが、

あちこち行ってみたいと思いました。

ていねいに読む本を読みました~奥泉光・いとうせいこう「漱石漫談」、みくのしん・かまど「本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む」、清水義範「主な登場人物」

最近「漱石漫談」を読み返したところ、

読むということは、ある小説と読者が関係を結ぶということ。(p153)

や、

そのことについてしゃべったり、聞いたり、そういうことを含めた言葉のネットワークの中に、小説を読むという行為はある。(p154)

というところが印象に残りました。

 

いとうせいこう奥泉光、この二人が小説の面白さを語る「文芸漫談」は、

その小説について話しながら

思いもよらないところにつっこんだり、話がふくらんだりしていって、

その時にしかない楽しさがあります。

次回は11月、渋谷で行われるようですね。

https://www.k-kikaku1996.com/work/bunman/flier/251122flier1a..jpg

 

そんな物語をていねいに読む本を、また最近読みました。

みくのしん・かまど「本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む」

 

「生まれて一度も読書をしたことがない男が本を読んだら、一体どうなるんだろう」
そんな素朴な疑問がきっかけで生まれた「本を読んだことがない32歳が初めて『走れメロス』を読む日」というオモコロ記事。
1人の男が人生で初めて本を読む。ただそれだけの記事が爆発的に拡散され、100万人の目に留まる大ヒット記事に……!

この本でしか味わえない、不思議な読書体験をぜひお楽しみください!

みくのしん・かまど「本が読めない33歳が国語の教科書を読む」

教科書の名作に挑戦!

Ⅹ騒然!「「山月記」を読めなかった男が1年半ぶりにもう一度読む日」収録!
山月記」に挫折した経験から、大人になった今、教科書に載っている作品を読んでみることに……。
「学び直し」ほど大げさではないけれど、きっと何かが変わるはず!

この本でしか味わえない、不思議な読書体験をぜひお楽しみください!

 

最初はオモコロの記事で知ったのですが、

情景描写というものがこんなに自分にひきつけて感じられるとは思わず、

一文一文を読み、語り、解釈していく姿に

私は1つの物語をこんなにじっくりと向き合ったことがあったかしら、と思いました。

 

清水義範「主な登場人物」
も、ちょっと似ているところがあります。

 

たとえばこの本の表題作では、

レイモンド・チャンドラーさらば愛しき女よ」の、登場人物一覧から

本編を想像していきます。

本当は絶対こういう話ではないけど、もしこういう話だとしても、

主な登場人物一覧には同じような人物が書かれるだろう、という。

ていねいに読む角度は違うけど、

ゆっくりつきあっていけば、より奥までわかるのかもしれませんね。

つながりについて。~ 文・おかべたかし 写真・やまでたかし「しらべるつながりのずかん」、新保信長「声が通らない!」、「うみのさかな&宝船蓬莱の幕の内弁当」

何かを読むことのおもしろさは、いろいろあります。

物語が好き、登場人物が魅力的、文章が好み。

扱われている題材が興味深い、作者を追っている、達成感がある。

そんなおもしろさの中に、つながりをみつけることがあります。

全然つながりを知らなかった人や者どうしに、共通点を見つけると、

どうするってわけではありませんが、なんだか楽しい。

 

文・おかべたかし 写真・やまでたかし「しらべるつながりのずかん」

 

世の中には、どんな「つながり」があるでしょう。
たとえば「サザンカ」と「スイセン」には「冬に咲く花」というつながり、「豆腐」と「しょうゆ」には「原料が大豆である」というつながりがあります。
では、「うちわ」と「ドングリ」にはどのような「つながり」があるでしょうか?
世の中にある「つながり」には、見ればすぐにわかるもの、ちょっと見ただけではわからないもの、しらべてはじめてわかるものなど、いろいろな「つながり」や「関係」があります。
本書では、そのいろいろな「つながり」や「関係」を写真で紹介します。

 

「目でみることば」で知って以来、この作者のファンなのです。

この本も、そうだったの!? とおどろくところがたくさんありました。

自分の知っている世界はごくごく一部なんだな、と教えてくれる本です。

写真もまたよくて、このカメラマンの方は、以下の本にも登場します。

 

新保信長「声が通らない!」

 

居酒屋で店員を呼んでも気づいてもらえない著者が、〈通る声〉をめざして悪戦苦闘。「声がよくなる」本を試し、アナウンサー、音響科学の専門家、アメ横のおじさん、大相撲の呼出し、オペラ歌手などに教えを乞い、ボイトレスクールにも通う。果たして、その成果やいかに!? すべての「声が通らない人」に捧げる声にまつわるエンタメ・ルポ!

 

この声にまつわる本は、「孤独のグルメ」からはじまります。

主人公・井之頭五郎が、回転ずしに入ったのだけど

レーンに回っていないものが食べたくなって、店員に声をかけても

気づいてもらえないいたたまれなさに、著者は強く共感します。

 

アナウンサーの苦手な言葉、ラジオパーソナリティの声、応援団長の声など

声について一家言ある人へのインタビュー。

声に関する本の紹介や、実際に行うボイトレなどもりだくさんなのですが、

カメラマンである山出高士が登場するのは、イベントでの様子。

全体写真を撮りたいときなど、

自分が声を出しても近くにいる人しか振り向かないのに、

彼が呼びかけるとにぎわっている中でもみんなカメラの方を見る。

意識したことはなかったのだけど、カメラマンも声を出す仕事なのだと思いました。

ddnavi.com

 

つながりでいえば、最近こんな本を読み返しました。

うみのさかな&宝船蓬莱の幕の内弁当

日ペンの美子ちゃんからロータスクーポン、夜の占い師にホモ雑誌、寄生虫館、見世物小屋にストリップ劇場、そしてなんと浮浪者体験まで。現代人が根源的な興味を持っていながらなかなか踏みこま(め)ない領域へ、一歩も二歩も自ら足を伸ばし、全世界を驚愕の渦におとしいれた世紀末の奇書、ついに文庫化。

 

80年代後半に連載されていたものなので、

毒っ気の強さを感じるくらい濃厚なサブカル感がありました。

主に書いているのはさくらももこ宮永正隆なのですが、

吉本ばななも一部を書いていたことには驚きました。

デビューしてまもないころから、この2人は仲が良かったみたいですね。

www.1101.com

さくらももこ展に行きました。

sakuramomoko-ten.com

さくらももこ展」に行きました。

息子さんがメッセージを書いていたのですが、

「そういうふうにできている」はじめ、

エッセイに登場しているのは何度となく見ていたので、

あの子が、あんなに大きく・・・と、会ってもいないのに思ってしまいました。

 

東北出身のわたしにとって、はじめての静岡はさくらももこの漫画やエッセイでした。

だからお茶をよく飲むんだな、富士山が見えるんだな、避難訓練が本格的なんだな、

というイメージはそこからで、

その延長に瀬戸口みづき「ローカル女子の遠吠え」

で描かれているような、今の静岡があるのだと思います。

 

会場では、原画や原稿もたくさん展示されていて、

あのおもしろかったエッセイをこんな字で書いていたんだな、

この話がすごく好きだったな、となつかしく、読み返したくなりました。

 

うみのさかな名義の本は、

ちょっとオモコロのような雰囲気があったような・・・

 

あの、6を横に倒したような目を

最近宮田ナノの本で見かけ、勝手につながりを感じています。

森茉莉の書く“シュウクリイム”、
内田百けんの書く“おかうこ”、
村上春樹の書く“オムレツ”
森見登美彦の書く“お酒” etc……

古今東西の名作に登場する美味しそうな食べものを、
食いしん坊の作者独自の目線で語るコミックエッセイ。

遠い存在だった文豪や、物語の登場人物たちが、
いつの間にか身近に感じられる名作レビューエッセイです。

冷蔵庫が出て来る本。~潮田登久子「冷蔵庫」、山本あり「冷蔵庫のアレ、いつ使うの?」、阿刀田高「干魚と漏電」

潮田登久子「冷蔵庫」を読みました。

 

自分の家の冷蔵庫から、大家さんの、友人の、とひろがっていった

冷蔵庫とその中の写真集です。
閉じたところと開いたところを並べてあるのが、大きく口をあけているようでした。

なかなか人の家の冷蔵庫の中を見る機会はないもので、

この冷蔵庫、牛乳パックが5本くらい入っていない? とか、

このおうち、すごくたくさん冷蔵庫にプリントを貼っているね? など、

生活感を感じます。

1996年に出版された本なので、給湯器や台所の感じにも

時間がさかのぼるような懐かしさを感じました。 

 

本文に、「自分と夫の島尾敏夫、そして生まれて間もない娘のマホ」とあって、

ひょっとしてと思ったら、それはやっぱりしまおまほのことでした。

「しまおまほのおしえてコドモNOW!」 おもしろかったです。

 

ちょっとだけ残った冷蔵庫の中身を使い切っていくのが、

山本あり「冷蔵庫のアレ、いつ使うの?」です。

マンガ家・山本ありは、結婚3年目の新米夫婦。サラリーマンの夫との食事はすれ違い気味だけど、根っからの食いしん坊であるふたりは〈自宅ごはん〉が大好き。 今宵も晩酌のアテを探して、冷蔵庫を物色中。すると、、、いつぞやに買った調味料が中途半端な量で賞味期限が間近です。ミニマリスト体質な夫が「コレ、どうするの?」と責めるように妻にたずねるのは日常茶飯事。すると、無駄が嫌いな妻(調理師免許を持ったマンガ家)は、見事に美味しいメニューに変身させちゃうのです── 

 
私も調味料って、余らせがちで…
気がついたら引き出しの中で固まっていることもままあります。
なので、個人的にも役立ちそうな本でした。
日本酒を使ったプリンとか、作ってみたい!
再現している記事もありました。
 
阿刀田高「干魚と漏電」は、冷蔵庫の掃除からはじまります。
銀座の恋の物語/干魚と漏電

銀座の恋の物語/干魚と漏電

Amazon

 

掃除をしていると、前にもらったししゃもが1匹、隅の方に落ちているのをみつけます。
カチカチになって、ちぢんで、ちょっと妙なにおいがして…
単なる導入かと思ったししゃもが、あんなつながり方をするとは思いませんでした。
 

印象に残るペットの名前について。~赤瀬川源平の「科学と抒情」、三浦しをん「風が強く吹いている」佐々木倫子「動物のお医者さん」

赤瀬川源平の「科学と抒情」をめくっていたら、

拾った犬のニナについて書いているところがありました。

家の裏にある山道に捨てられていた子犬に

近所の子供たちがこっそり牛乳やビスケットをあげていたんだけど、

親に知られて、

飼ってくれませんか、と段ボールを抱えた子供が家にやってきた…という経歴。

大きさから生まれたのは5月27日ごろだろう、ということで

27のニナになった、という話です。

 

そういえばこの人の建てた家は、ニラハウスと呼ばれていたんですよね。

家を建てるまでを書いた「我輩は施主である」は読んだのだけど、

町田市だったのか。

www.city.machida.tokyo.jp

 

 

ニラと言えば、

「風が強く吹いている」にはニラという名前の犬が出てきたな、

と思ったけれど、こっちはニライカナイが由来だったみたいです。

これはまた、読み返したい1冊。

単行本も文庫本も、表紙の絵を描いたのは山口晃で、

それも合わせていいんですよ~。

三浦しをん作品の中では、エッセイにときどき登場する野良猫ブチャイクも、

いい味が出ています。

 

 

さて、動物につける名前は、人に付ける名前とはまた違うおもしろさがあります。

こんな記事もありました。

dailyportalz.jp

 

佐々木倫子動物のお医者さん」では、

登場人物の多くは獣医大学に関わるので、いろんな動物が登場するのですが、

猫のミケや、ニワトリのヒヨちゃんがいる一方、

ちらりとしか出てこなくても

小さいという意味を表したかったらしい、犬のスコシや

人をガブリガブリと噛むので猫のガブリエルなどは、10年たっても

忘れがたい印象を残します。

ちなみに、表紙にもいるシベリアンハスキーの名前はチョビ。

 

今でも人気がある漫画で、たいへん読みがいのあるレビューを書いていた方や、

note.com

再現記事を書いていた方もおりました。

dailyportalz.jp

服のセンスや、文章のセンスがあるように、

名づけのセンスというのもあるかもしれません。