吸血鬼が登場する小説を読んだのは、
赤川次郎がはじめてだったのではないかと思います。
そう、「吸血鬼はお年ごろ」でした。
吸血鬼と人間のハーフであるエリカと、その父親フォン・クロロックが
メインとなって怪奇な事件を解決していく・・・というもので、
当時小学生だった私もずいぶん楽しみました。
時代を確認すれば、出版されたのは1981年から。
それが今でも出版され、上記のように新装版も出ていて、
改めてすごいことだと思います。
私が読んだのは、こちらの表紙↓でしたが
イメージが違いますね~。
漫画でも小説でも、吸血鬼が出てくるものはけっこう多いです。
Wikipediaにも「吸血鬼を題材にした作品の一覧」という
専用タグがあるくらいで、
シャーロック・ホームズの中にも吸血鬼がらみの話がありましたし、
数多くあるパロディの中には、
ドラキュラと対決する小説もあるようです。
今度読んでみましょう。
そうして、それらいろんな創作のもとになったのが、
「吸血鬼カーミラ」からの「吸血鬼ドラキュラ」です。
カーミラについては美内すずえの「ガラスの仮面」で知りましたが、
樋口一葉の「たけくらべ」も、シェイクスピアの「夏の夜の夢」も、
初めて知ったのはこの漫画であったことを思えば、
いろんなところに入り口があるというのは大事なんだと思います。
ここの語り手は、ローラという女性。
彼女が自分が少女だった時のことを思い出して書いた手記を、
とある博士が論文に引用したという設定です。
で、ローラが子どもの時に出会い、
共に暮らすようになったのがカーミラです。
2人は仲良くなるのですが、カーミラは自分のことをほとんど話さず、
朝起きなかったりほとんど食べなかったり、
不思議なことを言ったりしたりします。
タイトルどおりにカーミラは吸血鬼なんですが、
最後に彼女がいなくなったあとも、ローラはほのかに思慕を残し、
どことなく少女漫画の風を感じます。
中世ヨーロッパの伝説から忽然としてよみがえった恐るべき吸血鬼の跳梁か? ヨーロッパの辺境トランシルヴァニアに、無気味な謎に包まれて住む城主ドラキュラ伯爵。昼は眠り、夜は目覚め、永遠の生命とともに人血を求めてさまよう呪われた吸血鬼の宿命。現代の恐怖と怪奇を描いて百万読者の心胆を寒からしめる、名作怪異譚!
そうすると、「吸血鬼ドラキュラ」には
少年漫画の趣があるかもしれません。
吸血鬼は人外だ、人の血を吸って仲間を増やす悪だ、倒せ! という、
作中での善悪がはっきりとしているところが特に。
書かれている中には、差別的なものもありますが
100年以上前に書かれたものと思えば十分許容範囲だし
手紙とか新聞記事とか日記とか、そういうもので物語がすすむので
テンポがよく、楽しく読めます。
カーミラの友人であるローラが、あまり個性がなかったのと比較して
ドラキュラ伯爵に狙われるミナは冷静で頭がよくて、
守られるだけのヒロインじゃないところもいいです。
むしろここに登場する男たちは、専門家のヘルシング教授を除けば
悪人じゃないけどあんまり役にも立たなくて、
ミナと教授がいればいいんじゃないかな、という気分になります。
今となれば古典とも言える吸血鬼小説は、
ここからたくさんの物語を生み出しました。
これからも生まれてくる物語を、読んでいきたいと思います。