ディスコミュニケーションなんだ、という話をしていました。
猫の我輩はいろんなことを考えているんだけど、
周りの人はそんなこと思ってもいない。
どこにでもいて不思議ではない猫は、
時に事件現場に居合わせ、時に人をなぐさめ、
自ら事件を調べもします。
今日はそんな、猫の出てくるミステリーを紹介します。
猫でミステリー、といえばこれですね。
書かれたのは1970年代なのだけど、
文章のテンポがよく、話の展開もおもしろいので楽しく読めました。
ここに登場する猫は、紅茶を嗜むホームズ。
物思いにふけるような雰囲気をもつほっそりした三毛猫です。
このホームズが、何かを教えようとしているような
しぐさを見せるところや、犯人をひっかいたりするところなど、
謎の解決につながる行動をみせるところが
どこまで「わかって」いるのか、不思議な雰囲気をもたらしています。
この話の視点は、あくまで人間なのですが、
事件のはじまりから終わりまでを猫視点で書いたものが、こちら。
正太郎は、長めの毛には少しだけ白がまざった黒猫です。
猫といっても、人間と長い間暮らしてきたので
飼い主の使っているパソコンを立ち上げて、
壁紙の美人猫にみとれるところには、人間に近しいものを
感じました。
人が殺されても、猫にはそれほどダメージはなく
自分とは直接関係ないこと、として客観的にみているところが
独特の雰囲気を出していました。
そして人間と近しい猫、と言えばこちら。
何せ、実業家で童話作家でもあります。
アルバイトをしながら、自分を見つめ直している佐多くんは、あるお屋敷で、突然やって来た一匹の猫とその秘書だという男に出会う。実業家のA・ニャンと紹介されたその猫が、過去に屋敷で起こった変死事件を解き明かす?! って、ニャーニャー鳴くのを通訳しているようだが本当? 次々と不思議な出来事とニャン氏に出くわす青年の姿を描いた連作ミステリ。文庫オリジナルだニャ。
ここではアロイシャス・ニャン氏の推理を、
秘書兼運転手の丸山が通訳しています。
このニャン氏が、表紙にも描かれているような
タキシードをまとったような毛並みの猫なのです。
事件だけではなく、佐田くんの身の振り方まで
きれいに幕が引かれました。猫はすべてお見通し。
語り手を変えた続編、「ニャン氏の童心」も一緒にどうぞ。