ほとんど音も立てずに動く。すばやい。
思わぬところから出てくる。
人の近くにいるのに、人とは違うものを見ているような気がする。
だから、猫はホラー作品とも相性がいいのだと思います。
私にとってのそのはじまりは、やはりポーの黒猫でしょうか。
動物が好きでやさしくおとなしかった人が、
酒で変わってしまうというのは今でもありそうなことです。
語り手は「私は正気を失っているわけではなくー
また決して夢みているのでもない」 と言っていますが、
その語りが信用できないころもあり、
短い話ではありますが、いつまでも頭に残ります。
最後のシーンなど、かっと開いた猫の口がまざまざと見えるような
気持ちになりました。
そんな「黒猫」のように、いろんな猫が出てくる怪談が
黒木あるじ・我妻俊樹他の「猫怪談」です。
あの大きな瞳で、
猫は闇の中に潜む何かを擬っと見つめているのであろう。
私たちには見えない何かを。
とまえがきにあるのも、また印象的。
「猫は知っている」「猫は忘れない」
「ネコノヨウナモノ」「猫はいつもいる」
の4章に収められた39話は、いろんな形で猫が登場する
猫だらけの、実話怪談です。
そしてこちら、TONO「猫で語る怪異」は、
作者があちこちで聞いた話をアレンジして仕上げた
擬人化ならぬ擬猫化怪談。
怖いのが苦手な人でも読めるようにと、
人間を猫に置き換えて描いている漫画なのですが、
ときどき芯からぞっとします。
かわいいから、余計に怖いっていうのもありますね。