今から40年以上前、1970年代末のころ。
現在よりもずっと、フィンランドが遠い国であったころ。
1人の芸大生が、そこに留学した・・・。
私はこの本を、黒田龍之助の書いたものから知りました。
まさに「すばらしく楽しいエッセイ」にして、留学記です。
日本ではないから勝手が違って面倒だったり、
自分1人ができなかったりすることの悲しさも書いているけれど、
劣等感におぼれずに楽しいことをたくさん感じているところに
著者の強さを感じました。
ここで私は近藤聡乃の「ニューヨークで考え中」にも
そんな描写があったことを思い出し、本棚から抜きだしました。
ニューヨークでの暮らしは水に合っていて、
楽しいことの方がずっと多かったけれど、
自分が少数派であることで辛いことがあると
日本のマイノリティーにも思いを馳せる・・・というところに、
通り過ぎることと生活していくことは
また違うのだよな、とも思いました。
フィンランドで生活している人を紹介しているのが
です。
著者の1人、森下圭子は
ムーミンの公式サイトでもブログを書いています。
この本で紹介されるのは、
フィンランドでごくごく普通に生きている、11人のおじさん。
アコーディオン楽団のエーリクさん、きこりのレオさん、
白樺の皮を使って工芸を行うエイノさん・・・
フィンランドでの「きこり」は、
全員が森林管理局に属する公務員なんだそうです。
いろんなものを作っていくことや、
冬の暮らしについてインタビューをしたり、
薪割りやサウナを体験したりと、
間接的にでも知ることで、そこで生きている人に近づける気がします。
そしてフィンランドの美しい森については、こちらを。
リトヴァ・コヴァライネン、サンニ・セッポ
「フィンランド・森の精霊と旅をする Tree People」
著者である2人の写真家が、15年にわたりフィンランドの古い木々と、
その歴史を訪ねていく写真集。
日本の山とは色合いから違い、
ひんやりとした静かな空気が漂ってくるようでした。