ここ数年は旅行のついでに、とか
企画展目当てに、と言うことが多く、
その建物に何度となく足を運ぶ、ということはぐっと少なくなりました。
博物館の話です。
美術館でも、図書館でも、何かのついでに行ける距離にあるというのは
いいもので、何度も通うたびに、その場所とも親しくなっていくように
思います。
私が岩手に住んでいたときには、博物館がそうでした。
自転車置き場からゆるやかな階段を登って登って、
そこから見上げる建物を覚えています。
今日はそんな、博物館を書いた本を紹介します。
もともと博物館が好きな著者が、
「おもしろそうだな」と思ったところに行って、
その魅力をレポートするルポエッセイです。
「愛や夢のない人生など、クソのようなものだ」という表現が
とても印象に残ったのですが、
それは、著者が小説でもいろんな形で「愛」とか「業」を
書いているからなんじゃないかと思いました。
命令されたからするのではない。義務だからでもない。
それは走ることであったり、刺繍だったり、人との関係であったりと
様々ですが、そうせずにはいられない何かを持っている。
また、この本には博物館に関わる人の愛が書かれています。
設計した人がいて、資料を集めた人がいて、企画を考える人がいて、
PR活動をしている人がいて・・・と、その場所に関わっている人が、
少しづつ博物館を作り上げていくのだなあ・・・と、
しみじみとしたものを感じました。
個人が作った博物館も紹介されていましたが、
一つの価値観によって集められたコレクションもまた博物館なのだと
思います。
実際に博物館や美術館に寄贈されるということもありますしね。
そんなコレクションを紹介した本が、こちらです。
「わが家の民博にようこそ」
旅するライター&カメラマン松岡宏大が、世界の国ぐにで買い集めた工芸、民芸、雑貨、珍品迷品……。東京にある彼の家はいつしか「ひとり民俗博物館」と化し、独特の世界をつくりだしている。60点を超える品々を著者自らが撮り下ろした、ささやかで熱い図録集。
縄文土器からはじまる図録そのものを楽しむと同時に、
カッチーナとはなんだろう、草ビロードとはなんだろう、
ガンジーファとは? ブリンキービルとは? と、検索がはかどります。
個人的には「キツネと月の石」(p75)が欲しい! と思いました。
山を背景にして、上に三日月が、下にキツネの姿が彫られていて、
これを作った人はキツネが好きだったのかな、
お守りだったのかな、と想像がふくらみました。
三葉虫の化石から高野幸雄のキノコランプまで、
時代や場所を越境した収蔵品に
宝物を見せてもらった気持ちになりました。