読んだらおもしろいのはわかっているのですが、ページを開くのに時間がかかる作家が何人かいます。あれはなんなんでしょう。
あんまり楽しみだから、期待外れになるのが怖いのでしょうか。
万城目学も、読むまでに時間のかかる1人でしたが、えいっと読んだこの
文章がまろやかに広がって、頭の中の乾いた部分が濡れてくるようでした。
この本には、恋人にふられたばかりの大学生が、友人の就活のために早朝から野球を
することになる表題作「八月の御所グラウンド」と、
方向音痴の女子高生、サカトゥーこと坂東が女子駅伝を走ることになる
「十二月の都大路上下(カケ)ル」の2作が収録されています。
自分が通っている大学はずっと昔から、たくさんの人が通っていて、
自分が走っている道を、ずっと昔の人も走っていた。
昔と今を重ねて、自分たちはなんていい加減なんだ、という方向にはいかず、
説教臭くならないところがよかったです。
最初はそのつもりではなくても、やらないといけない状況になり、やっていくうちに
本気になっていく過程が楽しい。
上の記事の後半に、森見登美彦や綿矢りさの名前が出てきましたが、
「ぐるぐる問答」では、その両方が登場します。
特に森見登美彦とは、プライベートでも親交が厚いそうで、
お互いへの質問をベースに話していました。
ただ正直に、出たとこ勝負で喋るだけである。だから私はたいていの対談でぐるぐるしてしまう――(「はじめに」より)。そんな森見登美彦氏が、ぐるぐるしながらも臨んだデビュー直後の人生初対談から、憧れの人との緊張のご対面、15周年を迎えての振り返りまで。現在では入手困難な対談を網羅した、ファン必読の一冊です。
書いたものを友達に見せるのと、家族に見せるのはどちらが恥ずかしいか。
大阪弁を作品に使うか。
プロの作家はそういうことも考えるんだなあ!
昔の自分とも対談しているのが、「美女と竹林」のような、不思議なおかしさを生んでいます。
だけど京都に住む人、そこで生活している人とはやはり見るものが違うようです。
ミステリ作家の「私」が住む“もうひとつの京都”。その裏側に潜む秘密めいたものたち。古い病室の壁に、長びく雨の日に、送り火の夜に……魅惑的な数々の怪異が日常を侵蝕し、見慣れた風景を一変させる。
歪んだ京都を舞台にした、奇妙な味の短編集。
猫と忘却とともに、おそろしいものがやってくる。
単行本の表紙も雰囲気があっていいのですが、文庫も好きです。