唐桃の読んだもの。

読んできた本や漫画を、徒然に紹介していきます。

平塚、新横浜、鎌倉。神奈川県が舞台の本を読みました。

 

ライオンの棲む街  平塚おんな探偵の事件簿1 (祥伝社文庫)

東川篤哉「ライオンの棲む街 平塚おんな探偵の事件簿」

(試し読みあります)

東京の会社を辞め、地元平塚にUターンしてきた川島美伽と、

ライオンのあだ名を持つ友人、生野エルザ。

元同級生の二人は、息が合っていたりズレていたり・・・・・・

お互いに振り回したり振り回されたりしながら

湘南の片隅で起こる事件に挑みます。

 

湘南ひらつか七夕まつりや老郷(ラオシャン)の酢タンメン、

駅ビルのラスカなど、描写されているところは実際にあるようなので、

平塚に住んでいる人ならピンとくるのではないでしょうか。

 

そんな愉快なコンビが、新横浜にも現れました。

吸血鬼すぐ死ぬ(1)(少年チャンピオン・コミックス)

盆ノ木至「吸血鬼すぐ死ぬ」

吸血鬼が人間と共存したり混乱させたりしている世界の新横浜で、

吸血鬼ハンター・ロナルドと、

ひょんなことからコンビを組むことになった吸血鬼のドラルク

 

基本的には一話完結のコメディなので読みやすいです。

ここでの「吸血鬼」は「動物」と同じくらいの幅広いくくりなので、

人間に近かったり動物や道具がなったりと、

いろんな吸血鬼が登場します。

2019年8月末から、作者の体調不良で休載が続いていますが・・・

復活を待っています。

 

人とそうではないものが共存している、といえば

西岸良平の「鎌倉ものがたりもそうですね。

鎌倉ものがたり : 1 (アクションコミックス)

鎌倉には、明治時代以降から多くの文学者が訪れていたそうで、

鎌倉文学館のHPによれば、ゆかりの人物は300人を越えているとか。

そんな鎌倉を舞台にしたこの漫画は、ファンタジーをベースに

 ミステリー、SF、恋愛と

いろんな要素が入った話が楽しめます。

www.futabasha.co.jp

紙から作られるものの本を読みました。~チャルカ「アジ紙」、原デザイン研究所「SUBTLE」、辰巳雄基「箸袋でジャパニーズ・チップ!」

大阪に旅行するなら、行ってみたいと思っているお店があります。

それがこちらの、チャルカ

オリジナルの文房具と、東欧の雑貨などを販売しています。

 

アジ紙―東欧を旅する雑貨店チャルカの、好きで好きで仕方のない紙のはなし

チャルカ「アジ紙ー東欧を旅する雑貨店チャルカの、

好きで好きで仕方のない紙のはなし。」

 

アジ紙とは、味のある紙のこと。

白くてつるつるして新しい紙の真逆を行く、年期を感じさせる紙。

倉庫の奥に眠っていた紙、紙ナプキン、ワラ半紙、

パンの包み紙・・・

「紙と製本が好きでたまらない」雑貨ハンターが

チェコでみつけた紙ものは1つ1つが特別で、

製本職人ヤナタさんの作るノートについての文章は

一編の小説になりそうです。

 

この本がおもしろかったので、

他にも紙製品について書かれた本を紹介します。

 

SUBTLE―サトル かすかな、ほんのわずかの The 47th TAKEO PAPER SHOW

原デザイン研究所「SUBTLE」

竹尾ペーパーショウという、紙関連業界の展示会のカタログで、

紙の可能性について教えてくれる本です。

subtle.takeopapershow.com

上記の特設サイトにも紹介されていますが、

知っているはずの紙が見せる姿は輝いているようでした。

 

本文の中では、「紙に書くという行為で大切なのは、

書いたものを見ることで考えが変わったり、

紙と対話したりすることにあると思うんです。

ただの記録媒体ではなくて、自分の内側を一旦出して、

自分の声を外から聞くようなプロセス。」とあったのが印象的でした。

 

 

ほとばしる紙、したためる紙、かたどる紙、透かす紙、手触りを作る紙、と

紙にできることは、うんと広いのだなあ・・・と、圧倒されます。

 

箸袋でジャパニーズ・チップ!  テーブルのうえで見つけたいろんな形

辰巳雄基「箸袋でジャパニーズ・チップ!

テーブルのうえで見つけたいろんな形」

greenz.jp

2016-2017年に、著者が日本全国を巡って集めた

通称「ジャパニーズ・チップ」。

レストランや食堂などで出てくる箸やストローの袋を、

折ったり丸めたりしてそのまま席に残されるあれのことです。

箸置き、舟、星、人、ハート、エビフライ、

犬のようななにか、鳥のようななにか、よくわからない何か。

 

折り紙やトランプなど、誰かに教えられてはじめて知るものが

こんなところにもあったのだと思いました。

文字を書くことについての本を読みました。~新保信長「字が汚い!」、酒井順子「字を書く女 中年書道再入門」、井原奈津子「美しい日本のくせ字」

 大きさが整わない、書いているうちに中心がずれていく、

線がまっすぐ引けない。

自分がそうなので、字をきれいに素早く書ける人には憧れます。

 

しかし世の中には、綺麗ではないけど味のある、

真似したくなるような文字もあり、

手書きの文字がその人の個性を表していることも多くあります。

ちょっと気になっていたので、

今日は文字を書くことについての本を紹介します。

 

字が汚い! 

新保信長「字が汚い!」

books.bunshun.jp

ペン字の練習帳や本を試し、ペン字教室で指導を受ける。

作家や政治家、野球選手の文字を検証。

いろんな人とのインタビューを通して、

味のある、「いい感じの」文字をめざしていく本です。

各章の扉に、著者の書き文字が載っているのですが、

文字が変化していくのがはっきりわかります。

文字の基本、というのか元祖というのか、

ペンよりもずっと長いこと使われているわけだから

伝統があるというのか、

 とにかく書道についての本では、こちらがおもしろかったです。

字を書く女 中年書道再入門

酒井順子「字を書く女 中年書道再入門」

 

年賀状や手書きの原稿など、文字をテーマにしたエッセイと、

2年間にわたる書道の稽古の様子。

行書、草書、臨書、漢字かな交じり文と、

名のある人の文字を見て、教わり、自分でも書いていきます。

教えるのは、大東文化大学の河内君平先生。

done-labo.com対談で、作者がこの先生に

「書で人間性や人格って分かるんですか?」と聞いて、

人間性はよくわからない、だけど教養は出るんです。

と答えていたのが印象に残りました。

 

活字やフォントでも、印象に残る使い方をしていたり

オリジナルのフォントを作っている人はいるけれど、

使い方によって個性が現れるのかもしれません。

 ◇

そんなフォントとは正反対のところにある、

くせ字についての本がこちらです。

美しい日本のくせ字

井原奈津子「美しい日本のくせ字」

 

芸術家・岡本太郎が、著書で

「『美しい』は『きれい』とは全く違う」と言っていますが、

私も「美しい」という言葉を、きれいに整ったという意味ではなく、

そのものからなにかを感じて心に響くこととして使いたいと思います。

そんな美しい、くせ字の数々をぜひご覧ください。

 

ここで紹介されている文字は、著者が集めた文字。

松本人志がTV番組でフリップに書いた文字、

映画の字幕に使われていた文字、

道に落ちていたノートの文字、書道家の文字、

アートのような文字、韓流アイドルの書く文字、

新聞記者が取材で書くメモ・・・

書いた誰か、その時の時間を感じます。

 

自分の顔がその人だけのものであるように、

自分が書く字もその人だけのものなんだな、と思いました。

日々のごはんについて。~はらぺこ編集部・編「漫画家ごはん日誌」、西加奈子「ごはんぐるり」、オカヤイヅミ「すきまめし」

最近の暑さには、命の危険を感じるこのごろ。

水分と塩分の補給や直射日光の回避、

倒れる前に予防したいですね。

それには食事も大切、ということで

今日は日々のご飯について紹介します。

 

漫画家ごはん日誌 (フィールコミックス)

「漫画家ごはん日誌」

konomanga.jp

作ってもらったもの、自分で作るもの。

冷凍しておくおにぎり、趣味で育てている野菜、

郷土料理に、昔からの好物。あるいは食材。

そういうものが、1人の漫画家につき1頁で紹介されています。

(リレーコミックとありました)

巻末のインタビューの言葉を借りれば、「人生に寄り添う」食べ物。

 

思い出や普段の食卓を描くほかにも、

レシピを載せていたり、本を紹介していたり、

紹介のしかたは様々で、飽きることがありません。

 

たとえばお茶椀によそったご飯でも、

人によって書き方がずいぶん違っていて

作品を知っている人でも、知らない人でも

この人はこういうものを食べてきたんだなあ、と思いました。

 

料理が好きでなくても、食べることは、誰しも無関係ではいられません。

だから、何をどんな風に食べるかというのは、

その人の価値観や人間関係、

つまりその人自身を表しているのだと思いました。

 

ごはんぐるり

西加奈子「ごはんぐるり」

小説「奴」も収められた、食べ物エッセイです。

エジプトで母親が作ってくれた日本料理

・・・からの、不自由さとおいしさ。

セネガルでの料理・・・を教わるときに感じる、生活のリズム。

店で頼む料理の「正解」・・・からの、キュートないびつさ。

読んでいる間、

知っているはずの料理を別のもののように感じていました。

 

すきまめし (EDEN)

オカヤイヅミ「すきまめし」

 

ひとりぐらしで在宅仕事。

いつ何を食べてもいいし、食べなくてもいい。

気のむくままに、いろいろ作る。

ちょっとしたすきまに作るレシピと、日常が楽しいマンガです。

漬けていたピクルスがだめになってがっかりしたり

(そしてまた、ビンを洗って漬けなおす)、

甘いものを食べたらしょっぱいものを食べたくなって

コンビニを往復したり。

日常に根ざしているというか、日常そのものが描かれています。

カラスが出てくる本を読みました。~松原始「カラスの教科書」、宮崎学「カラスのお宅拝見!」、三浦しをん「あの家に暮らす四人の女」

カラスが道にクルミを落として、車にひかせるのを見たことがあります。

実際に見ていると、アレはなかなか難しいようです。

 

カラスが道路にクルミを落として、近くの電柱に止まる

→しばらく待つ

→やってきた車が、クルミをふまずに通りすぎる

→電柱から飛んだカラスが、クルミをくわえて飛び上がる

→最初に戻る

という過程を10回以上繰り返していたので、

ようやくクルミが割れた時には、

離れたところから見ていた私も拍手したくなりました。

 

それが頭に残っていたからか、 この本に書かれていた

カラスのクルミ割りについても印象に残りました。

 

カラスの教科書 (講談社文庫)

松原始「カラスの教科書」

 

この本では、カラスの一生や生活のようす、

カラス同士の社会や人間社会との関わり、

神話や物語に登場するカラスや、うまくつきあう方法など、

様々な角度からカラスを書いています。

そのへんにいる鳥、というものではなく

社会の一部として存在するカラスという鳥について

親しみがもてるようになりました。

 

著者を知ったのは、デイリーポータルZの記事です。

dailyportalz.jp

 

カラスの中でも、こちらは巣に特化しています。

カラスのお宅拝見! (Deep Nature Photo Book)

宮崎学「カラスのお宅拝見!」 

 

北海道から沖縄まで、場所は日本全国。

各地に作られたカラスの巣を、木登りでのぞいて回った写真集です。

 

木の枝や草、動物の毛や布団の綿、

針金、ハンガー、ビニール紐と、使えるものは何でも使っていて、

くちばし一つで器用に作るものだと思いました。

 巣によって色や模様が違う卵から生まれたばかりの、

羽も生えていないとりにく同然の雛が育って、

赤い口を精一杯開けている様子が生々しいです。実際に生です。

 

あの家に暮らす四人の女 (中公文庫)

そして、

三浦しをん「あの家に暮らす四人の女」

に登場するのは、カラスの善福丸です。

この善福丸、ただのカラスではありません。

人の心に入ることはできないけれど、

長い間縄張りの中で、住民を観察してきたカラスであり

吾輩は猫である」の猫のように、この家の回りで起こる出来事を

昔から眺めている存在でもあります。

 

刺繍作家の佐知と気ままな母鶴代、

佐知の友人雪乃と多恵美。

4人の女が暮らす、杉並の古びた洋館での日々。

人生のままならなさも、寂しさや楽しさも感じさせてくれます。

 

ロシアについて書かれた本を読みました。~シベリカ子「おいしいロシア」、速水螺旋人「いまさらですがソ連邦」

最近日差しが強くなり、

外が晴れているのを見るたび目が軽くうつろになるのを感じます。

なので今回は、寒い場所の本を紹介します。

おいしいロシア (コミックエッセイの森)

シベリカ子「おいしいロシア」

 

ロシア第2の都市、サンクトペテルブルグ出身のP氏と

知り合った、日本で生まれ育ったリカ子。

リカ子が1年間ロシアに住んでみてのコミックエッセイです。

描かれているのは、主にロシア料理について。

 

クレープみたいなブリヌイ(イクラやサーモンを乗せたりもする)や

じゃがいものオリヴィエサラダなど、どんな味なのか興味がわきます。

 

また、6月には白夜となるとか、冬は日照時間が短いから憂鬱になる、

という描写に北国を感じました。

日光にあたらないと、ビタミンDがつくられないから

サプリメントで補う人もいるそうです。

www.e-aidem.com

ロシアが今のロシアではなかったころ、

ソ連についてはこちらの本が、愉快で読みごたえがありました。

いまさらですがソ連邦

速水螺旋人「いまさらですがソ連邦」

 

 クレムリンよりも巨大な黒パンを針の穴でひっかくように、

浅く広く書いた本」と説明にありましたが、

政治も歴史も兵器も人も日常も、公平に書いてあります。

book.asahi.com人類初の人工衛星スプートニクについても書かれており、

村上春樹の「スプートニクの恋人」の

表紙はこれだったのか、とようやく知りました。

スプートニクの恋人 (講談社文庫)

 わたしたちがもうたっぷり知っていると思っている物事の裏には、

わたしたちが知らないことが同じくらいたくさん潜んでいるのだ。

理解というものは、つねに誤解の総体にすぎない。

それが(ここだけの話だけれど)わたしのささやかな世界認識の

方法である。

 

というところが印象に残っています。

箱が出てくる本を読みました~小西七重「箱覧会」、吉田篤弘「おやすみ、東京」、阿刀田高「アラビアンナイトを楽しむために」

箱覧会

小西七重「箱覧会」

大切なものをとっておく箱。

箱を作る箱屋。

誰かに送りたくなる箱。

マッチ箱。

開けたらそのときの思い出がわきあがる箱。

いろんな箱を紹介するこの本は、

私の思い出もかきおこします。

小学校のときに使っていた、丈夫な緑のお道具箱のこととか。

 

www.excite.co.jp

おやすみ、東京 

吉田篤弘「おやすみ、東京」

小道具係のミツキ、タクシー運転手の松井、古道具屋のイバラギ、

倉庫番の前田、名探偵シュロ・・・

東京ではたらく人々の、夜の小説。

人と人が、いろんな物や場所を経由しながら

つながっていく連作短篇集です。

 

ここで登場する箱は、相当に巨大です。

映画を撮影するときに必要な、いくつもの小道具がおさめられた箱、

「この国の過去三百年の生活や風俗をいろどった、

ありとあらゆる細々としたものが保管されている」

巨大な小道具倉庫から、物語ははじまります。

 

アラビアンナイトを楽しむために (新潮文庫)

阿刀田高アラビアンナイトを楽しむために」

箱物語という言葉を、ここで知りました。

ひとつの物語の中で、登場人物が自分の物語を話し、

さらにその中にでてくる人も自分について語り出す。

入れ子細工の箱のように、

アラビアンナイトの中でいくつも語られる物語。

 

あまり知られていない話や、アラビア方面の文化について、

作者が楽しく説明してくれます。

 

そしてミステリーでの箱といえば、それは密室じゃないかと思いますが

それについてはまた改めて書きたいと思います。