唐桃の読んだもの。

読んできた本や漫画を、徒然に紹介していきます。

イヤミスについてのメモ。~西澤保彦と東野圭吾

大矢博子の本によれば、

「イヤミス」と最初に使ったのは霜月蒼だそうです。

2007年に、本の雑誌で行っていた連載「このイヤミスに震えろ!」によるものだとか。

もちろんそれまでも、後味の悪い話はあったけれど

ジャンルとして確立されるようになったのは2011年の後半からのことで、

震災がきっかけにあるのではないか、と書かれていました。

 

イヤミスとホラーは、すごく近いところにあると思っていますが、

その共通点といえば、

身近にいる人が、はっきり「悪い」行動をとっていている怖さ、嫌さ。

止められない無力感。裁かれない悪意。常識を超える行動。

といったところでしょうか。

それこそ、村田らむの「人怖」に出てくるような…

 

最近亡くなった2人、西澤保彦と東野圭吾の小説にも、

そんな要素があると思います。

登場人物がよい方向に進んでいくことを予感させるものも多いのですが、

救いのない話、絶望的な話も書かれています。

 

西澤保彦の小説では、最近読んだものの中では

「流血ロミオ」(腕貫探偵、残業中)「動機、そして沈黙」(同題)

「殺し合い」(生贄を抱く夜)などが、印象に残りますが、

 

先日「夏の夜会」を読み返して、

ずっとそういうことを書いていたのだと思いました。

過去の記憶は、時間が過ぎてしまえばいろんな理由であいまいになり、

当事者であっても肝心なところを忘れてしまうことがある。

場合によっては、自分のしたことが耐えられないから過去を塗り替えてしまう。

そんな妄想、自己欺瞞が崩されたときにどうなるかはそれぞれなのですが。

 

東野圭吾の小説では、

「踊り子」や「闇の中の二人」(犯人のいない殺人の夜)

後味悪いですね。

ほかにも「悪意」の犯人には陰湿さにげんなりしたり、

「笑小説」シリーズでは、

人の悪意やみみっちさ、そこからくる嫌な感じの笑いが濃厚です。

 

「毒笑小説」の文庫版では、京極夏彦との対談が収録されているのですが、

そこで「面白くないって言われたらすごく怖い」と話していたのは、

大阪生まれだからかな…と思いました。

 

千街晶之の「ミステリを書く!」の中でも、インタビューの中で

「人間にとって大切なものは何かということと、その喪失感について

いろんなパターンでやってみている」

と話していたので、

その方向次第で家族愛にも、イヤミスにもなるのだな、と。

 

ちなみにこの本では、

勤めていた会社をやめないといけなくなった理由や、

「一日何ページくらい書いてるの」と聞かれた馳星周が、

量を話したら「舐めてるんじゃないの」と言われた

というエピソードも載っていて、おもしろい本でした。

このシリーズ、新装版にして出ないかなあ…と、今でも思っています。