建売の建物は、その場所や周りに馴染んでみなければ、
なかなか区別がつきにくいことがあります。
何度か同じ住宅街を通って、迷わず目的地につけるようになったら、
そこに目が馴染んだということかもしれません。
今回紹介する本には、その場所にその時間にしかなかった建物が
収録されています。
ひとつひとつに間違えようがないほどの特徴、個性があり、
読み終わった時にはそれまでと違った目になっているはず。
印象的なのは、表紙の青。
ブルーシートの青色。
つまり、そういうものでできた建物についての、
著者の卒業研究として書かれた本です。
テントやビニールシート、段ボールなどいろんなもので作られた
路上の家は、ひとつとして同じものがなく
しようと思えば跡形もなくどこかに行ってしまうことができる。
あるいは、どこかにやってしまうことが。
目をそらすのではなく、近づくことで生まれた稀有な本です。
そんな「0円ハウス」での生活は、「TOKYO 0円ハウス 0円生活」に
詳しく書いてあります。
また、建物の細かいところを見るならこれ。
屋根や、塀や、車庫や、建物のあちこちに使われているトタンについて。
雨ざらしになって白茶けた、日常の風景として存在するトタンの写真集です。
読んで感じる、この気持ちが侘び寂びなのでしょうか。さびついているだけに。