大切なものをとっておく箱。
箱を作る箱屋。
誰かに送りたくなる箱。
マッチ箱。
開けたらそのときの思い出がわきあがる箱。
いろんな箱を紹介するこの本は、
私の思い出もかきおこします。
小学校のときに使っていた、丈夫な緑のお道具箱のこととか。
小道具係のミツキ、タクシー運転手の松井、古道具屋のイバラギ、
倉庫番の前田、名探偵シュロ・・・
東京ではたらく人々の、夜の小説。
人と人が、いろんな物や場所を経由しながら
つながっていく連作短篇集です。
ここで登場する箱は、相当に巨大です。
映画を撮影するときに必要な、いくつもの小道具がおさめられた箱、
「この国の過去三百年の生活や風俗をいろどった、
ありとあらゆる細々としたものが保管されている」
巨大な小道具倉庫から、物語ははじまります。
箱物語という言葉を、ここで知りました。
ひとつの物語の中で、登場人物が自分の物語を話し、
さらにその中にでてくる人も自分について語り出す。
入れ子細工の箱のように、
アラビアンナイトの中でいくつも語られる物語。
あまり知られていない話や、アラビア方面の文化について、
作者が楽しく説明してくれます。
そしてミステリーでの箱といえば、それは密室じゃないかと思いますが
それについてはまた改めて書きたいと思います。