小説を読む、ということは音楽を聞くことに似ているかもしれません。
ページをめくるたびに言葉のイメージがふくらんでいき、
おもしろい本を読んだなあ、と満足して息をつきます。
ある国際ピアノコンクールの参加者と、
その周りの人を語り手として紡がれる「神と遊ぶ」ための物語。
建築だったり、美術だったり、何かしらのよさが、
見ただけではわからなくても
説明された文章でわかる、ということがあります。
それは、その文章を書いた人とイメージを共有することだと思います。
ピアノの大会ですから、ここで扱われるのはクラシック、
私の中で確たるイメージのない分野なのですが、
聞いてみたいと思うのは、この小説の中で生まれたイメージが
素敵なものだったからかもしれません。
キャラがかわいい、物語が楽しいで読み終わっても
それはそれで楽しいのですが、
関連するものについても、もっと知りたいと思うのは
もっと好きになりたいからなのだと思います。
こちらの舞台は、21世期末。
音響設計士兼ジャズピアニストの主人公が
依頼された仕事から始まる、世界をゆるがす一大事。
ジャズについてはクラシックと同じく、ほとんど知らないのですけど、
くるくると変わる視点についていくのが楽しく、
スウィングとはこういうものなのかと思いました。
そして、著者の他の小説を読むとつながるところがたくさんあって
これも一つの変奏曲のように感じられました。
この本と他の本が、未来と今が、他の場所と混ざり会う楽しさ。
そして、ピアノの漫画といえばこちらも。
世界は、音楽に満ちているのだということが
実感できた気がします。