共通のインタビュアーが、いろんな人の話を聞く本が好きです。
複数の人の話を連続させることで、時代の共通点のようなものを感じます。
今日は、ビレッジセンター出版局から90年代後半に出版された
インタビューシリーズを紹介します。全4冊なようですので、そこから3冊を。
Wikipediaによるとこの出版社は、技術評論社から独立したソフトウェア開発会社で、
その一部で出版もしていたようです。
ここでのインタビュアーはミステリ評論家で、今もたくさんのミステリの解説を書いています。
出版された当時と今、20年以上を経ることによる変化と、
作家の一本筋の通ったようなところを感じました。
テキストを論じることを放棄して作家の人生のアウトラインだけつまんで、作品まで分かったようなような気になるのは勘違い(京極夏彦)
僕は「本物みたいなの」が好きなやつで、相棒は本物が好きだった。だから相棒は本物を作ろうとしたんだけど、僕はマガイモノを作ろうとした(井上夢人)
ホモセクシャルの男性が書いたと思ったという人が結構多いんです。男性か女性か分からないふうでいたかったので、それは嬉しいような(恩田陸)
一番読んでいたジャンルであるので、今でも好きな著者が多く、興味深いところがあちこちに書かれていました。大極宮が作られた理由にも触れられています。
――「今までになかったようなインタビュー本をつくりたいんです!」思わず「よっしゃ!」とガッツ・ポーズを取りたくなるような願ってもない依頼であった。結果的に本書は、「ホラー」という今もっとも熱い注目をあつめるジャンルについて、その最前線に立ってホラーシーンを先導する作家たちが、銘々のたどってきた奇跡を振り返り、実作者の立場から体験的ホラー観を率直に披瀝するという、かつてないスタイルの贅沢なガイドブックとなった――(東雅夫「あとがき」より)
インタビュアーの東雅夫はアンソロジストとしても有名ですから、
質問するだけではなく、会話がはずむ対談みたいなところもあって、
特に井上雅彦との回は吸血鬼vs退治人でした。
巻末には日本ホラー小説年表も載っていて、タイトルを眺めていると
あれはおもしろかったな、あの本とこの本は同じころに書かれたんだな、など
いろんなことが想起されました。
また、藤吉雅春をインタビュアーにした「ノンフィクションを書く!」は
1999年の段階で「あぶらが乗っているノンフィクションの書き手10人」
へインタビューしたものです。
取材の中で劇的な出会いがあったとしても
作者がどこで生まれ、何をしてきたかと無関係ではいられない。
記事が書かれるまで、本が出るまでに、何があったのか。
書いたものはどう残るか、ということも考えました。
書かれている中にはもう亡くなっている人もいます。
ここに書かれている人の本は、ほとんど読んだことがありませんでしたが、
読みたいと思う本がたくさんありました。
今はもう注文できないので、図書館などでみつけたらぜひ、とお勧めしたい
シリーズでした。