唐桃の読んだもの。

読んできた本や漫画を、徒然に紹介していきます。

豆と、大豆から作られたものの本を読みました。~長谷川清美「日本の豆ハンドブック」、高野秀行 「謎のアジア納豆―そして帰ってきた〈日本納豆〉―」、花福こざる「豆腐百珍百番勝負」

農作物の研究所で、アルバイトをしていたことがあります。

大豆畑の苗に水をやったり、花の数を数えたり、豆を種類ごとに分けたり。

ひとくちに大豆と言っても、いろんな種類があるなあと驚いたものですが、

最近その時のことを思い出す本を読みました。

長谷川清美「日本の豆ハンドブック」

 

市場に出回らない貴重な豆から話題の豆まで、全国各地から集めた在来豆を約200品種収録。各豆の基礎情報(特徴、由来、食べ方)から、豆にまつわる郷土食や伝統行事まで紹介した在来豆の入門書。

 

morinooto.jp

スーパーでよく見るような豆とは少し違う、日本の在来種。

おいしいから各地に残ってきた、豆の記録でもあります。

写真は原寸大なので、眺めていてもなんだか楽しい。

著者はべにや長谷川商店という名前で、主に北海道の豆を販売しているそうです。

こちらも気になりますね。

 

高野秀行 「謎のアジア納豆―そして帰ってきた〈日本納豆〉―」

 

辺境作家が目指した未知の大陸、それは納豆だった。タイやミャンマーの山中をさまよううちに「納豆とは何か」という謎にとりつかれ、研究所で菌の勉強にはげみ、中国に納豆の源流を求め、日本では東北から九州を駆けめぐる。縦横無尽な取材と試食の先に見えてきた、本来の姿とは? 知的好奇心あふれるノンフィクション。

 

blog.kitchhike.com

納豆は日本だけのものじゃない。

そのままご飯と食べるだけのものじゃない。

大豆じゃなくても作れる。

わからないからおもしろい、ということを教えてくれる本です。

ミャンマー、タイ、ブータン、ネパール、中国、そして秋田県

思わぬつながりをみつけたり、危険なことがあったり、

どんな場所でも人は、何かを作って、食べて、生きている。

同じものを食べるのは、気持ちを共有することでもある。

読んでて楽しい、納豆をめぐる旅。

続編は、もっと遠くに行きます。納豆すごい。

www.mensnonno.jp

 

花福こざる「豆腐百珍百番勝負」

 

著者は夫婦で花屋をしているので、

「おもしろ植物図鑑」「公園植物ワンダーランド」のような漫画も描いています。

今回は、江戸時代のベストセラー「豆腐百珍」を再現しています。

実際に作っている人もいました。

 

www.ienomistyle.com

 

みそとこしょうを混ぜて田楽に使う、など

これなら作れそうだ、というものもいくつかあったので、そのうち挑戦してみたいです。

服についての本を読みました。~ 久世番子「神は細部に宿るのよ」、大田垣晴子「日用服飾事典」

新井素子が、エッセイでこういうことを書いていたんです。

たしか、吾妻ひでおのイラストがかわいい「ひでおと素子の愛の交換日記」

手元にないので記憶で書くと、

 

自分は時々、インタビューとか受けて雑誌に載る。それで、写真を見た人から「いつも同じ服着てますね」っていわれることがあるんだけど、そうではないのよちょっと聞いて。

うちでは猫を飼ってるから、毛が目立つので黒っぽい服は着られなくて、タートルネックとか首もとがぴったりしている服は息が詰まりそうになって、手首のあたりが広がっている服はよくしょうゆとかひっかけてこぼしちゃって、チクチクするのが嫌だから着られない素材もあるので、改まった席では似たような感じの服になってしまうんだけど、どれも違う服なんです。

 

ということからはじまっていたのですが、

すごくわかる・・・と、終始うなずきました。

私は猫は飼っていませんが、ぴったりした服は息苦しくなって

ちくちくするとずっとむずがゆくて、落ち着かないのです。

今日はそんな、服についてのこもごもを書いた本を紹介します。

 

 身近なファッションについての漫画では、

久世番子「神は細部に宿るのよ」が好きです。

 流行りについていけないオシャレの川下在住、番子さんとその周りの人々による、

「被服と暮らしのちまちました」お話です。

 

いつのまにか似たような色の服ばっかり買ってしまう、

好きだけど似合わない服をどうするか、

タンスに服を入れることが面倒で、ふわっと放置…

もう、あるあるとうなずきっぱなしです。

作者の久世番子は、内澤旬子「着せる女」にもちょっと登場していて、

また違った様子が見られます。

 

漫画でファッション、といえば ヤマシタトモコ「裸で外には出られない」

も好きなのですが、登場人物が口をそろえて「ファッションってわかんない!」

と言っていて、安心します。

何が似合うか迷走するのは、自分だけじゃないんだなあ。

 

 大田垣晴子「日用服飾事典」

実はわたし、美術大学に行っていて、ファッションデザインコースを専攻していた

のだが、一期生だったということもあり認知度が低かった。

というか世間的にファッション=オシャレ、流行追っかけみたいな軽いイメージが

あるのだと思う。

でも世の中のあらゆるものの動向もつまりは流行でしょう。思い軽いにかかわらず。

ファッションとは時代を見ることなのだ。

 

ABC順に、服飾に関する雑学をたくさんのイラストで紹介しています。

身近なもの、歴史上のもの、親世代が着ていたようなもの。

2002年の本なので、今の流行とはまた少し違いますが、知識ゼロでも楽しく読めます。

それで言えば、紹介した本は全部そうですが。

幽霊の出てくるミステリーを読みました。~ 有栖川有栖「濱地健三郎の霊なる事件簿」、赤川次郎「怪談人恋坂」

幽霊や怖い話といえば夏のもの、という印象があります。

8月のうちに、そんなミステリーを紹介します。

 

 有栖川有栖「濱地健三郎の霊なる事件簿」

 

心霊探偵・濱地健三郎には鋭い推理力と幽霊を視る能力がある。事件の加害者が同じ時刻に違う場所にいる謎、ホラー作家のもとを訪れる幽霊の謎、突然態度が豹変した恋人の謎……ミステリと怪談の驚異の融合!

 

この世界では幽霊がいて、人間に何かしらの影響をもたらす。

ということを前提とした、ミステリーです。

book.asahi.com

 濱地健三郎が仕事と恋愛感情をごちゃ混ぜにしたり、助手の志摩ユリエが

差別や嫌がらせを受けたり、社会からプレッシャーをかけられるような、

つまり読んでいてストレスになる描写がほぼなくて、

安心して霊の怖さと、探偵の推理に没入できました。

 

kadobun.jp

有栖川有栖で、幽霊といえば、「幽霊刑事」も好きです。

宝塚でミュージカルにになってたんだ・・・!

kageki.hankyu.co.jp

 

 赤川次郎「怪談人恋坂」

 

謎の死をとげた姉の葬式の場で、郁子が伝えられたショッキングな事実。その後も郁子のまわりでは次々と殺人が起こって……不穏な事件は血塗られた人恋坂の怨念か。生者と死者の哀しみが人恋坂にこだまする。

 

この本の主人公、郁子ははじまりの時点で9歳。

そして、それから7年後に事件が再び動き出します。

<序><破><急>の章立てや演劇的な場面が楽しく、

まとわりつくような怨念にぞっとする、母の愛と呪いの小説だと思いました。

 

けっこう、赤川次郎の書くホラーが好きです。

自選恐怖短編集にディストピアなら「東京零年」、サスペンスなら「白い雨」

オカルトなら「我が愛しのファウスト」と、幅も広くて。

 

こんなシリーズも出ていたんですね~。

www.choubunsha.com

 

と、記事を書いていて思い出した小説があります。

主人公である語り手は、はじまりの時点で死んでいます。誰かに殺されたのです。

そこに天国からのお迎えが来るのですが、

誰にどうやって殺されたのかわからないままでは死ぬに死ねない。

そこで・・・時間を戻してもらうかその場面を見せてもらうかして、

自分を殺した犯人は誰か推理する、という短編でした。

作者やタイトルは覚えていないのですが、あらすじレベルでの内容やエピソードは覚えている。

そういう本や漫画は、他にもいくつかあります。

縁があったらまた読めるでしょう。

雨が印象的な本を読みました。 ~ 佐藤秀明「雨のくに」、吉田篤弘「流星シネマ」 、武田康夫「虹の図鑑 ーしくみ、種類、観察方法ー」

最近は晴れている日がほとんどで、太陽がかんかん照りつけるこのごろ。 

ちょっと涼しくなりたくて、今日は雨が印象的な本を紹介します。

 

雨のくに

雨のくに

  • ピエブックス
Amazon

 佐藤秀明「雨のくに」

 

雨の写真を撮り歩くということは

果てしなく歩き続けることだと気がついた。

 

www.hideakisato.com

四季それぞれの雨が、各地の写真と一緒に紹介されています。

夏の雨でいえば、

人が駆け込んでくるような激しい雨は、主従雨(あらぶりのあめ)。

伊豆地方の船乗りの言葉から、筍梅雨(たけのこづゆ)。

竹林に降る雨を竹雨(ちくう)。梅雨入り時期の雨を墜栗花(ついり)。

虫時雨は虫の声を、川音の時雨(かわとのしぐれ)は水音を雨にたとえたそうです。

雨の名前を知ることは、花の名前を知るように、1つ1つが印象深く記憶に残ります。

 

 吉田篤弘「流星シネマ」

 

人生の季節は冬に向かっているけれど、

何度でも再生し、何度でもやり直せる。

 

見えないもの、聴こえないものを大切に紡いできた、

優しい物語の名手による待望の長編小説。

 

都会のへりの窪んだところにあるガケ下の町。

僕はその町で、〈流星新聞〉を発行するアルフレッドの手伝いをしている。

深夜営業の〈オキナワ・ステーキ〉を営むゴー君、

メアリー・ポピンズをこよなく愛するミユキさん、

「ねむりうた」の歌い手にしてピアノ弾きのバジ君、

ロシアン・コーヒーとカレーが名物の喫茶店〈バイカル〉を営む椋本さん、

ガケ上の洋館で、〈ひともしどき〉という名の詩集屋を営むカナさん――。

個性的で魅力的な人々が織りなす、静かであたたかな物語。

 

www.bookbang.jp

印象的な雨の描写がたくさん出てきます。

少年のころ、森で友達がケガをしたときの雨。

中学生のころの、ボートで川を下るときの雨。

またとない音楽が紡がれる夜の雨。

今見ているものと絡まるように、昔のことが思い出されて、

すくいあげられた昔が、今とも、未来ともつながっているのだと思いました。

 

www.sankei.com

 

そして、雨の後には虹が見られます。

 武田康夫「虹の図鑑 ーしくみ、種類、観察方法ー」

さあ、虹を見つけに出かけよう!

「虹」とは何か、どんなときに見られるか、虹の仕組みから、種類、探し方、撮影方法まで、220点もの写真・イラストとともに解説。さらに、虹を取り巻く文化の紹介やコラムにより、虹の知識も深まります。

 

作者は元高校教諭で、”空の探検家”としても活動しているそうです。

この本では、なかなか見られないような虹についても詳しくなれます。

二重の虹、白い虹、飛行機から見える虹、丸い虹、

虹ではないけど虹色の自然現象・・・

どういう理由でおきるかわかっていても、やっぱり虹は不思議なもので、

見つけたら近くの人に知らせたくなります。

 

note.aktio.co.jp

写真が楽しい絵本を読みました。~谷川俊太郎「なおみ」、今井昌代・ヒグチユウコ「カカオカー・レーシング」、 マーガレット・ワイズ・ブラウン「せかいをみにいったアヒル」

絵本といえば、名前通りに絵を主としたものが多いのですが、

写真をメインにした絵本、というのも結構あるのです。

こんな賞もありました↓

shashinehon.jp

 

本の中の世界が、絵とはまた違うかたちで立体的にあらわれるところが好きです。

 今日はそんな絵本について紹介します。

なおみ (日本傑作絵本シリーズ)

なおみ (日本傑作絵本シリーズ)

 

 谷川俊太郎「なおみ」

わたしと、なおみ。

わたしのうまれるずっとまえからそばにいるなおみ。

わたしはなおみに語りかけ、一緒に絵本を読んで、海を眺め、けんかして、看病する。

人形と少女、ふたりきりの世界。

 

女の子と同じくらいの大きさに見えるなおみの目が、

ときどき人間のように見えて心がざわめきました。

 

奥付によれば、モデルは石岡祥子さん。

名前で検索してみると、ドイツで陶芸をやっている人が出てきたのですが、この人なのかな・・・

また、他のブログではこんなことを書かれていました。

 

kazeandsoraand.blog.fc2.com

 福音館書店のHPには次のような説明があります。

・人形「なおみ」は、加藤子久美子(かとうじくみこ)氏に、この絵本のために作ってもらった。
・人形が身につけているものはすべて、古い正絹の本物。
・舞台の西洋館は、昭和初頭に建てられたもの。帝国ホテルの設計で有名なライトの弟子、遠藤新氏設計の邸宅。
・小道具の写真立て、時計、絵はがきは、いずれも谷川俊太郎さんからお借りしたもの。

 

www2d.biglobe.ne.jp

さらに、谷川氏自身がこの人形について語った文も。

以下引用。

 

そう言えば私には人形を主人公にした写真絵本もあった。名をなおみというその人形は背丈九五センチの縫いぐるみだが、初めて見たとき背筋がぞくっとしたほどなまなましかった。作って下さったのは加藤子久美子さん、作るのに四ヵ月かかったということだ。
「人間そっくりのすがたかたちをもっていながら、人間とはちがって生れも育ちも死にもしないもの、いわば凍りついたような時間を生きている人形というものと、やがておとなになるなまみの少女、そのふたつの存在の交流と対比のうちに、時間をとらえることはできないだろうか――」
そんな着想で作られたこの絵本『なおみ』は、絶版になったいまでも、時折懐かしがってくれる人に出会う。

 

 

カカオカー・レーシング Imai Masayo Artworks

カカオカー・レーシング Imai Masayo Artworks

  • 作者:今井 昌代
  • 発売日: 2017/10/10
  • メディア: 単行本
 

今井昌代・ヒグチユウコ「カカオカー・レーシング」

 

この本の表紙にあるぬいぐるみを見られる機会があって、

周りをぐるぐる巡ってはいろんな角度から眺めました。羊毛フェルトなのかな?

 

犬に猫。タコにイカひとつめちゃん

いろんな生き物が、カカオカーで競争します。

その生き生きとした姿に見入ってしまいました。

 

www.1101.com

 

 

せかいをみにいったアヒル

せかいをみにいったアヒル

 

 マーガレット・ワイズ・ブラウン「せかいをみにいったアヒル」

 

写真を撮っているのは、動物写真家の先駆けイーラ(カミーラ・コフラー)。

岩合光昭の本で知った人です。

 

 白黒写真と、動物の距離の近さがおもしろい本でした。

表紙のようにアヒルがカメの上に乗っていたり、

犬の隣にたたずんだり、チンパンジーと遊んでいるようだったり。

鳥は顔に筋肉がついていないので、表情があまり作れないそうですが、

どことなく満足そうに見えました。

藝大について書いている本を読みました。~あららぎ菜名「藝大受験ものがたり」、二宮敦人「最後の秘境東京藝大 天才たちのカオスな日常」

 

 を読んだので、今日は藝大についての本を紹介します。

 

私がはじめて芸大というものを知ったのは、

投稿雑誌「ファンロード」に連載されていたレポ漫画でした。

作者が予備校で働いていたときのエピソードを、今でも覚えています。

受験の後に、今年のテーマはエロスだったと生徒に聞かされて、

私は隠喩たっぷりにバラを作りました 瀬戸内寂聴の「花芯」のイメージで」

「渋いなおまえ・・・」

という会話がありました。

当時は瀬戸内寂聴が誰かもろくに知らなかったのですが、今言葉にしてみれば、

具体的なもの、ここでは「花芯」という小説をイメージして作ろう、

と考えられるのはその小説について知っている人しかできない。

見てきたものやしてきたこと、自分とつながっているものが多いほど

作れるものの範囲は広くなる。自分の知識ができることを広げていくのだ・・・

ということを感じたからなのだと思います。

 

最近は「藝大受験ものがたり」も出版されましたね。

東京藝大ものがたり

東京藝大ものがたり

 

 

こちらは3浪して、東京藝術大学デザイン科に合格した著者の体験談です。

勉強して、浪人して、アルバイトして、予備校に行ってと、

どういうことをしてきたか感情の揺れ動きと共に描いていて、

行きたいけど受験が怖い、否定されるのが怖いというところには

こちらにもダメージが入ってきましたが、

「試験は明日だというのにー私は早く次の絵が描きたくて仕方なかったんだ」

といえるのは、自分でそうすることを選び取ったのだな…と、

感じ入るところがありました。

 

続巻があるなら、藝大での日常を知ってみたいと思いました、が

やっぱり知りたい人はたくさんいるようですね。

cakes.mu

 

そんな藝大での日常は、こちらでちょっと教えてくれます。

 二宮敦人「最後の秘境東京藝大 天才たちのカオスな日常」

絵画、彫刻、工芸、音楽、声楽、建築、映像・・・

1から何かを作ることが日常である人たちのインタビューです。

されている人の名前も一緒に書いてあるので、検索してみるとまた楽しいです。

それぞれの受験、学科の概要、作品制作・・・

同じ大学でも、学部が違えばすることも全然違う。物の見方も、感じ方も、

形にするやり方も違う。その違いが、読んでいて楽しいです。

漫画版もまた、良いです。

www.comicbunch.com

 

www.geidai.ac.jp

 

大阪が舞台の本を読みました。~ 平野暁臣「「太陽の塔」岡本太郎と7人の男たち」、東野圭吾「浪花少年探偵団」、津村記久子「まぬけなこよみ」

 これまでで2回、大阪に行ったことがあります。

1度は修学旅行の時。とはいえその時はUSJに行ったようなもので、

もう1回はみんぱくに行ったようなものでした。

モノレールに乗っていると、丘からぬっとあらわれる

太陽の塔が印象的でした。

 平野暁臣「「太陽の塔」岡本太郎と7人の男たち」

 

2018年3月に予定される塔内一般公開を契機にふたたび世間の耳目を集めるであろう《太陽の塔》。
岡本太郎の最高傑作にして日本社会への強烈なメッセージを内包する大阪万博テーマ館は、若者たちの気概と情熱の産物だった。
前代未聞、誰にも経験のなかったこの巨大プロジェクトに、彼らはなにを考え、どのように立ち向かっていったのか。
本書は、岡本太郎のもとで《太陽の塔》と「テーマ館」の建設に携わった男たちのインサイドストーリーを収めた非常に貴重な歴史的「証言集」である。

 

私は大阪万博を知りませんが、この本を読んでみると、

いろんな人にとって特別なイベントだったと伝わるようでした。

太陽の塔を設計した人、建築した人、プロデュースした人・・・

おじいさんと言ってもいいような年の人たちが、

自分がしたことや岡本太郎についていきいきと話しています。

2025年にも万博は行われる予定ですが、どんなものになるんでしょう。

www.expo2025.or.jp

 

さて、大阪についてですが

言葉自体は同じだけど、使い方が違う。

あたりまえのように行われている知らない行事がある。

同じ地域であっても違いはもちろんあるのだけど、

大阪はわかりやすいイメージがあるだけ、違いも気づきやすい感じがします。

今日はそんな、大阪についての本を紹介します。

最近読んだ本に限りますが・・・

 

東野圭吾「浪花少年探偵団」

 

小学校教師の竹内しのぶ。担当児童の父親が殺された。家庭内暴力に悩んでいた児童と母親に嫌疑がかかるが、鉄壁のアリバイが成立。しかし疑念を覚えたしのぶは調査を開始。子供の作文から事件解決の鍵が、たこ焼きにあることに気づく。教え子たちを引き連れて探偵ごっこを繰り広げる痛快シリーズ、第一弾。

 

主人公の周りでおきる事件とその解決はもちろんですが、

風俗描写も印象に残ります。

なにせ書かれたのが昭和末、1988年なので、

 表計算のソフトがうまく使えない人がこっそりソロバンを使っている、

というところにはそういう時代だったんだな~、と驚いて、

自然に身についた常識は、自分で更新していかないといけないんだなあ・・・

と思いました。

 

 津村記久子「まぬけなこよみ」

 

七十二候を芥川賞作家が書いたらどうなった? 骨正月、猫の恋、衣替え、蚯蚓鳴く……。四季の言葉から生まれた脱力系歳時記エッセイ。

 

ふつうの日常の中で折々書かれている大阪やその近くのこと、

十日戎あびこ観音での節分、車折神社の茅の輪くぐりや嵐電などを、

違う国のことのように読みました。

だから、「新じゃが」からの点子ちゃんとアントン

「新蕎麦」からのわんこそばなど、

自分でも知っていることが書かれているところにぐっと引き付けられます。

オカヤイヅミのイラストもかわいい。

 

江弘毅・津村記久子「大阪的」でも、

大阪では相手よりおもしろいことを言おう、

相手を立ててちょっとつまんないことを言おう、

と「水位の調整みたいなこと」を平気でやる、ということが書かれていて、

なんてレベルが高いことをしているんだろうと、息をのみました。

 

大阪を舞台にした作品、大阪出身の作家はたくさんいるので、

また同じ題で書きたいですね。