唐桃の読んだもの。

読んできた本や漫画を、徒然に紹介していきます。

江戸が舞台の妖怪話を読みました。~霜島けい「のっぺら あやかし同心捕物控」、畠中恵「しゃばけ」、 宮部みゆき「あやし」

 

のっぺら: あやかし同心捕物控 (光文社時代小説文庫)

霜島けい「のっぺら あやかし同心捕物控」

 

南町奉行所定町廻り同心の柏木千太郎は、腕が立ち情に篤く正義感にあふれた江戸の人気者。――ところが、一つだけ変わったところが。彼には、顔がない。つまり、のっぺらぼうなのだ! 不器用だが心優しい同僚の片桐正悟や、千太郎を慕う下っ引きの伊助らとともに、数々の不思議な事件の解決に奔走する。笑えて泣けて癒やされる、傑作あやかし時代劇の第一幕、開幕です!

 

 形としては、「鎌倉ものがたり」とも似ています。

人は人として暮らしているのだけど、

あたりまえのようにそうではないものもいる。

ミステリ要素もあり、ファンタジー要素もあり、恋愛要素もちょっとあり

(千太郎は人間と結婚していて、娘もいるのです)。

3巻まで出版されているのですが、もっと続いてもいいのにな、

と思いました。

のっぺらぼう・千太郎が、人間と馴染んでいて

ストレスを感じずに読めるのもいいところ。

 

江戸で妖怪、といえばこちらも有名ですね。

しゃばけ(新潮文庫)【しゃばけシリーズ第1弾】

畠中恵「しゃばけ」

江戸有数の薬種問屋の一粒種・一太郎は、めっぽう体が弱く外出もままならない。ところが目を盗んで出かけた夜に人殺しを目撃。以来、猟奇的殺人事件が続き、一太郎は家族同様の妖怪と解決に乗り出すことに。若だんなの周囲は、なぜか犬神、白沢、鳴家など妖怪だらけなのだ。その矢先、犯人の刃が一太郎を襲う……。愉快で不思議な大江戸人情推理帖。

 

このシリーズでは、人間も妖怪も、万能ではないところが好きです。

優しいから悩んだり、理解できないこともある。

人じゃないから、人と感じ方が違ったり、

気持ちが分からないところがある。

だから、1人きりではやっていけない。

コミカライズに著者が寄せていた言葉のように、

ゆっくり時が流れて行く、あたたかくも少しだけ寂しい話です。 

 

物語が生まれる。すると何もなかった所に、家が建ち、道が出来、

沢山の人が暮らしを始める。

そして、話の中で主人公と決まった誰かが、

一所懸命動き出すことになるのだ。

すると、物語の中で時が流れ始める。

  

あやし (角川文庫)

 宮部みゆき「あやし」

 

その話が、どういうふうに終わるのか、おまえは、ちゃんと聞いたのか?
 
木綿問屋の大黒屋の跡取り、藤一郎に縁談が持ち上がったが、女中のおはるのお腹にその子供がいることが判明する。店を出されたおはるを、藤一郎の遣いで訪ねた小僧が見たものは……江戸のふしぎ噺9編。

 

 三島屋変調百物語は、人から語られる話を聞いて、

聞き手が自分を立て直していく話しでもあると思います。

だから、主役は聞き手でもあるんですよね。

この本でも、誰かの語られるかたちでの話はあるんですけど、

主役は語り手なんです。

 震えるような記憶をもつ少年、

このままだと悪い方向にいくと薄々わかっている女、

もうどうしようもない悲惨な話を語る老人。

 

めでたしで終わる話しにはほっとするけれど、

それだけでは終わらないホラー小説です。