休館していた美術館も、あちこちで再会してきました。
でも私の行きたかった大原美術館は、空調工事を行うため
8月すぎまで休館する模様。今年のうちに行けたらいいなあ。
その代わりに、というのも何ですが
今日は美術館ではたらく人の本を紹介します。
宇佐江みつこ「ミュージアムの女」
受付や監視係を主にする、
岐阜県立美術館の職員が描いた美術館の日常4コマです。
お客さんのことや美術館のルール、画家のルドンについても
知らなかったことがたくさん描かれていました。
周りには無限にどんぐりが落ちているとか。
岐阜のおすすめスポットも紹介されていて、
美術館の職員のなかでも、学芸員の日常を書いたものがこちら。
ここには行ったことがあるので、
(たしか、山口小夜子の展示をしていたときでした)
主人公ユキが座っていたソファーはロビーにあったあれかしら、と
記憶と照らし合わせることも楽しかったです。
この本の中で、先輩の学芸員が
休日にあちこちのギャラリーを回るシーンがあったのですが、
それは初老耽美派よろめき美術観賞術の中で、山下裕二が
「できるだけ上質のアウトプットをするためには、
インプットの量を増やすほどいい」
と書いているようなことなのかな、と思いました。
まさに今起こっている出来事や、作品を作って発表していく人たちを
知ることもまた仕事なんですね。
他館への資料貸出や設営、
企画展のプレゼンの様子もちょっと描かれています。
また、企画をたてて実行していくことについては、
こちらが詳しかったです。
魅力的な展覧会を企画して、時代の新たな感性を提案するキュレーターという仕事。その醍醐味を紹介しながら、仕事の実際の姿を実務的な展覧会の企画から実施までの流れに沿って具体的に解説する。アーティストとの契約書の雛型など資料も充実の手引書。
キュレーターの仕事の大部分が、地道な作業の積み重ね。
そもそも仕事を得るまでが大変だし、収入も恵まれていない。
だけど、展覧会をつくる仕事は、非常に知的で創造的な仕事であり、
他をもって代えがたい魅力がある。
企画を会議にかけて、それが通ってからの
資金調達、作家や作品の選定、輸送に保険、会場設営、
キャプション製作、関連イベントにアンケート、
印刷物のデザインやカタログづくり・・・等々も
ひとつひとつ具体的に書かれており、
展覧会を作るのには、表にあらわれないたくさんのことを
決めていかないといけないのだと思いました。
そのあたり、図書館とも似ています。
表紙の作品も印象的でした。
作者の荒神明香は、JINでも個展を開いていたそうです。