屋久島の森というのは一つの楽器のような、
あるいは動物や植物や昆虫が音を出しているオーケストラのようなものです。
山極寿一は霊長類についての世界的権威。
屋久島でも研究を行っていたそうです。
小川洋子は小説家で、「科学の扉をノックする」
「言葉の誕生を科学する」など、科学者との本も出版されています。
この本は、「野生の眼を持つ霊長類学者」と
「ヒトの心の森に分け入る小説家」による対話です。
対談と屋久島でのフィールドワークが収められており、
もちろんその中で、お互いに話していくのですが、
言葉では語りきれない、言葉にならないものの多さを感じました。
ゴリラが一人でいるときにハミングをしたり、
仲間と楽しさを分かち合うために歌うような声を出すというところや、
小説を書くことは、森の中を歩くことに似ているということなど、
興味深いことがたくさん書かれていました。
山極寿一の本を読むのはこれが初めてでしたが、
他の本も読んでみたくなりました。
そしてこの本の後に読んだので、 サルの描写に目がいったのがこちら。
小猿は灰色のふさふさしたボールみたいで、
じっとこっちを見てくるのでどぎまぎする・・・と書かれていました。
これは学生時代からの 友人4人が屋久島・・ではなく、Y島を歩く話です。
山を歩きながら、思い出や昔の謎めいた話をしていく中で
お互いの過去と現在に触れていきます。
時間がたったから話せることも、あえて話さないこともある
「美しき謎と過去への思索の旅」。
各章で語り手が変わってくるので、
自分が思っている自分と、人から見た自分が微妙に違っていて、
お互いに親しく、観察しあっているようなところが好きです。
この濃密な空気は静けさを感じさせない。
この感じは、棚に書籍のぎっしり詰まった、天井の高い、
古い図書館の中にいるようだ。という描写が印象的で、
私もその場所に行ってみたい、と思いました。
屋久島の山には、こちらの本でも登っていました。
2005年5月某日、著者たちは三泊四日の屋久島旅行に出かけました。
これは「起こったことをおこった順に」書く、旅日記です。
九州の中でも最高峰の宮之浦岳に登り、
ハイになっているところがおもしろかったです。
「脳内麻薬が出ているような」と書かれていました。
エッセイを書くための旅行なので、
やはり受動的なことよりもあえて難しいこと、どうなるか分からないことに
挑戦していく方が楽しく、ネタになると考えていたところが
作家ならではだと思いました。
屋久島。
いつか、行きたいものです。