カラスが道にクルミを落として、車にひかせるのを見たことがあります。
実際に見ていると、アレはなかなか難しいようです。
カラスが道路にクルミを落として、近くの電柱に止まる
→しばらく待つ
→やってきた車が、クルミをふまずに通りすぎる
→電柱から飛んだカラスが、クルミをくわえて飛び上がる
→最初に戻る
という過程を10回以上繰り返していたので、
ようやくクルミが割れた時には、
離れたところから見ていた私も拍手したくなりました。
それが頭に残っていたからか、 この本に書かれていた
カラスのクルミ割りについても印象に残りました。
この本では、カラスの一生や生活のようす、
カラス同士の社会や人間社会との関わり、
神話や物語に登場するカラスや、うまくつきあう方法など、
様々な角度からカラスを書いています。
そのへんにいる鳥、というものではなく
社会の一部として存在するカラスという鳥について
親しみがもてるようになりました。
著者を知ったのは、デイリーポータルZの記事です。
カラスの中でも、こちらは巣に特化しています。
北海道から沖縄まで、場所は日本全国。
各地に作られたカラスの巣を、木登りでのぞいて回った写真集です。
木の枝や草、動物の毛や布団の綿、
針金、ハンガー、ビニール紐と、使えるものは何でも使っていて、
くちばし一つで器用に作るものだと思いました。
巣によって色や模様が違う卵から生まれたばかりの、
羽も生えていないとりにく同然の雛が育って、
赤い口を精一杯開けている様子が生々しいです。実際に生です。
そして、
に登場するのは、カラスの善福丸です。
この善福丸、ただのカラスではありません。
人の心に入ることはできないけれど、
長い間縄張りの中で、住民を観察してきたカラスであり
「吾輩は猫である」の猫のように、この家の回りで起こる出来事を
昔から眺めている存在でもあります。
刺繍作家の佐知と気ままな母鶴代、
佐知の友人雪乃と多恵美。
4人の女が暮らす、杉並の古びた洋館での日々。
人生のままならなさも、寂しさや楽しさも感じさせてくれます。