人ではないもの、生きていないものを生き物の形にしたりするのは
最近始まったものでもありませんが、この本もその1つでしょうか。
好きなサイトで紹介されていて、ずいぶん前から気になっていたのです。
蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (講談社文芸文庫)
- 作者: 室生犀星,久保忠夫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/04/28
- メディア: 文庫
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「金魚はおさかなの中でも、何時も燃えているようなおさかななのよ。
からだの中まで真紅なのよ」
「何故そんなに、さかなのくせに燃えなければならないんだ」
「燃えているから、おじさまに好かれているんじゃないの」
老小説家の「おじさま」と赤い金魚と少女の狭間を行き来する
「あたい」が織りなす交流なのですが、お魚と人にしては
ちょっとなまめかしくて、人の男女だとするとちょっと幻想的で、
不思議な浮遊感がありました。
「おじさま」に安心しきっている「あたい」は、ブラック・ジャックを信頼する
ピノコに似た雰囲気があって、胸苦しい甘さを感じました。
で、金魚といえば・・・
こちらも、また読み応えたっぷりでした。
金魚のグラビアや、金魚が金魚として成り立つまでの歴史、
食器や絵や着物や、あちこちに使われている金魚の紹介に、
岡本かの子の「金魚繚乱」。
出目金やらんちゅうを見て、水中で輝くうろこやひらひらと揺れる尾を見て、
金魚は人によって作られた、
「かわいらしい異形」「愛でられるつくりもの」なのだとしみじみ思いました。
で、作り物+金魚といえば・・・
こちらは著者の作品を撮った写真集。
樹脂の中を泳ぐ、絵の具の金魚には
生きていないものなのに、本物の動きを感じることができました。
いつか写真ではない、実物を見たいものです・・・