唐桃の読んだもの。

読んできた本や漫画を、徒然に紹介していきます。

猫が推理をする本を読みました。~赤川次郎「三毛猫ホームズの推理」、柴田よしき「ゆきの山荘の惨劇 猫探偵正太郎登場」、松尾由美「ニャン氏の事件簿」

 奥泉光いとうせいこうが、夏目漱石の小説について語り合う

「漱石漫談」の中で、「我輩は猫である」は猫と人との

ディスコミュニケーションなんだ、という話をしていました。

猫の我輩はいろんなことを考えているんだけど、

周りの人はそんなこと思ってもいない。

 

どこにでもいて不思議ではない猫は、

時に事件現場に居合わせ、時に人をなぐさめ、

自ら事件を調べもします。

今日はそんな、猫の出てくるミステリーを紹介します。

 

三毛猫ホームズの推理 (角川文庫)

赤川次郎「三毛猫ホームズの推理」

 

 猫でミステリー、といえばこれですね。

書かれたのは1970年代なのだけど、

文章のテンポがよく、話の展開もおもしろいので楽しく読めました。

 

ここに登場する猫は、紅茶を嗜むホームズ。

物思いにふけるような雰囲気をもつほっそりした三毛猫です。

 このホームズが、何かを教えようとしているような

しぐさを見せるところや、犯人をひっかいたりするところなど、

謎の解決につながる行動をみせるところが

 どこまで「わかって」いるのか、不思議な雰囲気をもたらしています。

 

 この話の視点は、あくまで人間なのですが、

事件のはじまりから終わりまでを猫視点で書いたものが、こちら。 

ゆきの山荘の惨劇 -猫探偵正太郎登場- (角川文庫)

柴田よしき「ゆきの山荘の惨劇 猫探偵正太郎登場」

オレの名前は正太郎、猫である。同居人は作家の桜川ひとみ。オレたちは山奥の「柚木野山荘」で開かれる結婚式に招待された。でもなんだか様子がヘンだ。これは絶対何か起こるゾ……。

 

正太郎は、長めの毛には少しだけ白がまざった黒猫です。

猫といっても、人間と長い間暮らしてきたので

飼い主の使っているパソコンを立ち上げて、

壁紙の美人猫にみとれるところには、人間に近しいものを

感じました。

 

人が殺されても、猫にはそれほどダメージはなく

自分とは直接関係ないこと、として客観的にみているところが

独特の雰囲気を出していました。

 

そして人間と近しい猫、と言えばこちら。

 何せ、実業家で童話作家でもあります。

ニャン氏の事件簿 (創元推理文庫)

松尾由美「ニャン氏の事件簿」

アルバイトをしながら、自分を見つめ直している佐多くんは、あるお屋敷で、突然やって来た一匹の猫とその秘書だという男に出会う。実業家のA・ニャンと紹介されたその猫が、過去に屋敷で起こった変死事件を解き明かす?! って、ニャーニャー鳴くのを通訳しているようだが本当? 次々と不思議な出来事とニャン氏に出くわす青年の姿を描いた連作ミステリ。文庫オリジナルだニャ。

 

ここではアロイシャス・ニャン氏の推理を、

秘書兼運転手の丸山が通訳しています。

このニャン氏が、表紙にも描かれているような

タキシードをまとったような毛並みの猫なのです。

 

事件だけではなく、佐田くんの身の振り方まで

きれいに幕が引かれました。猫はすべてお見通し。

語り手を変えた続編、「ニャン氏の童心」も一緒にどうぞ。

オランダについて書かれた本を読みました。~いしいしんじ「アムステルダムの犬」、 有栖川有栖「幻想運河」、赤瀬川原平「フェルメールの眼」

オランダの正式名称が、ネーデルラントとなったそうです。

知らなかった・・・

ネーデルラントが正式「オランダは国名ではない」と政府が宣言 - ライブドアニュース

 

日本とも何かと縁の深いオランダですが、

私の中のチューリップと風車というイメージから

一歩脱却させてくれたのは、やはり本でした。

今日は、オランダについて書かれた本を紹介します。

いや、ネーデルラントですね。

 

まずは、著者が犬の着ぐるみ姿で売ったというこの本。

アムステルダムの犬

いしいしんじ「アムステルダムの犬」

www.webdoku.jp

 似顔絵を描いては売り、

ガンジャを楽しみ、街をぶらついて、一匹の犬に懐かれる。

そんな、アムステルダムでの日々。

読んでいると、とても長いことのようでしたが、10日もなくて、

時間が違う流れを持っているようでした。

出会う人々は層が厚く、書かれているのはひたすらに

楽しいことばかりで、幸せな気分になりました。

 

幻想運河 (実業之日本社文庫)

 有栖川有栖「幻想運河」

 

大阪とアムステルダム、2つの水の都でおこるバラバラ殺人事件。

話のメインは事件なのだけど、謎を解決して一件落着ということはなく、

どこか幻想的で、雲をつかむような印象がのこります。

 

著者の弟夫婦がアムステルダムに住んでいて、

案内してもらったときに生まれたイメージを膨らませて

生まれた話だそうです。

オランダ、ネーデルラントのことだけではなく、

水の都といわれたもう一つの都市、

大阪についてもちょっと知ることができました。

 

そしてネーデルラントといえば、この画家の出身地でもあるのです。

[新装版] 赤瀬川原平が読み解く全作品 フェルメールの眼

赤瀬川原平「フェルメールの眼」

 

 フェルメールは、17世紀ネーデルラントを代表する画家の一人です。

ゴッホより200年ほど前の人ですね。

残した作品の少なさもあり(36点!)、妻が亡くなった後は

ずいぶん長い間忘れられた存在になっていたそうです。

 

この本では、1点1点の作品についての紹介と、

著者の感想が書かれていて、

「いい」絵のどこがいいのか、

それほどでない絵と何が違うのかわかります。

 

当時はヨーロッパの市民の間にも文通が広まりだしたころだった、

とも書かれていて、それを思うと手紙を書いていたり

読んでいたりする絵にも違った趣きが感じられて、 

本も絵画も、眼にする時期によって

見せる顔が全然違うものだと思いました。楽しかった~。

書店と猫が出てくる本を読みました。~アネカワユウコ「猫本専門 神保町にゃんこ堂のニャンダフルな猫の本100選」、ヒグチユウコ「ほんやのねこ」、スズシロ「ほんとねこ」

栃木県の小山駅近くに、猫のいる古本屋がありました。

個人でやっているような小さなお店で、

猫はおとなしくレジの近くに座っていたり、

本棚の間を歩いたりしていました。

新年最初の記事は、書店と猫について書かれた本を紹介します。

 

猫本専門 神保町にゃんこ堂のニャンダフルな猫の本100選

アネカワユウコ「猫本専門 神保町にゃんこ堂

            ニャンダフルな猫の本100選」

古本街で有名な神保町。

数多くある店の中には、猫の本をメインにおいているところもあります。

そこが、このにゃんこ堂。

常時400冊以上の猫本を用意しているこのお店は、

神保町に行くなら、ぜひ寄ってみたいところです。

 

この本では、店主おすすめの猫本100冊が紹介されています。

写真集、小説、コミック、ノンフィクション・・・

気になる本がたくさんあり、紹介のコメントも猫への愛を感じます。

 

ほんやのねこ (MOEのえほん)

ヒグチユウコ「ほんやのねこ」

 

本屋を営む、きれいでなぞめいた女主人は

物知りで面倒見がいいお姉さん。

店を訪れる客に、ふさわしい本を紹介しています。

 

すみからすみまで楽しめる、大事にしたい本です。

ddnavi.com

 

ほんとねこ

スズシロ「ほんとねこ」

 

猫と本と本屋さんの、まったりした日常コミックです。

二匹の猫、オンちゃんとハルちゃんがかわいい・・・

書店での日常や、本の紹介もされていて、興味がわきます。

今住んでいる所には、近くに書店がないのが残念なのですが、

やっぱりいろんな本がある本屋さんはいいものだよな、と思います。

 

pot-au-feu.blog.jp

今年も更新していきますので、よろしくお願いします!

沖縄について書かれた本を読みました。~よしもとばなな「なんくるなく、ない」、池澤夏樹「アマバルの自然誌 沖縄の田舎で暮らす」、福岡耕造「島の美容室」

今くらいの時期に、石垣島に行ったことがあります。

ほとんどずっと雨が降っていましたが、

冬の雨でイメージするような冷たさはあまりなく、

海も明るい色で、やっぱり南の島なのだなあ、と思いました。

今日は、そんな沖縄について書かれた本を紹介します。

 

なんくるなく、ない―沖縄(ちょっとだけ奄美)旅の日記ほか (新潮文庫)

よしもとばなな 『なんくるなく、ない―

沖縄(ちょっとだけ奄美)旅の日記ほか―』 | 新潮社

  

たくさんの人が集まりすぎて、

おのずと生きづらくなってしまう都市から離れて。

 

1999年から2005年にかけて、訪れた沖縄の島について

何度かに分けて書かれています。

見て、食べて、体と心の全体で沖縄を感じたのが伝わってきて、

沖縄に恋をしているようだと思いました。

 

 観光客はいても観光地ではない、という

波照間島について書かれた部分に

「島焼け」という言葉が出てきました。

台風が来ると、島の真ん中まで波がかぶる。

その後で雨が降らないと、塩分が流されないので植物が枯れてしまう。

それを、島焼けと言うそうです。

 ちょっと検索したくらいじゃ出てこない言葉でした。

広辞苑になら載っているかな・・・。

 

また、

やんばるの原生林では、生命はありのままの形で

気持ち悪くおぞましくからみあっていて、そこでしか生きられない

奇妙な生き物がうじゃうじゃ暮らしていて、

心臓がどくどくいうように、血管が蜘蛛の巣みたいに

全身をくまなく覆っているように、生きている。

 というところで、こちらの本を連想しました。

 

アマバルの自然誌―沖縄の田舎で暮らす (光文社文庫)

池澤夏樹「アマバルの自然誌 沖縄の田舎で暮らす」

 

1998年の暮れから2004年の夏まで、

著者が知念村で暮らしていた間に観察した

周囲の自然について書かれています。

周辺で見かける鳥、地域の草刈り、大量発生したヤスデ、台風、

朝焼けの美しさ・・・

知らない鳥、知らない草、知らない生き物。

「自然を無視して暮らせない日常」での、

知らないものに親しんでいくのが楽しく、

時に失われゆくものがさびしい自然観察です。

誰もがそれぞれのレベルに応じて無知であるのが、

自然を前にした人間の姿なのだろう。

 という言葉が印象に残りました。

 

写真集 島の美容室

 写真・福岡耕造「島の美容室」

 

ここは400人が住む渡名喜島

そこで月の10日間営まれる、島の美容室に来た人や、

島の風景が写された写真集です。

縁というものを感じる本でした。

 

誰かに言われたわけでもない。

自分がやらないといけなかったことでもない。

 たまたま出会い、たまたま知って、ふと行ってみた。

それが続いた。

 

www.qjnavi.jp

初めは信用されず、家も借りられなかった、という文章があって、

外部の人を受け入れることの難しさも感じました。

 

www.okinawatimes.co.jp

 今日の記事で、今年は書きおさめになります。

閲覧、評価などありがとうございました。

来年もゆっくり更新していきますので、よろしくお願いします。

飛行機の中で事件が起こる本を読みました。~東野圭吾「殺人現場は雲の上」、石持浅海「月の扉」、記伊孝「犯罪交渉人 峰岸英太郎」

あれは小学生の時でした。

学校でスキー遠足に行ったとき、

いくつも飛行機雲を見たことを覚えています。

ほんの2、3時間で10本以上の雲を見ました。

だからその日は晴れていたんでしょう。

山のむこうからまた違う山の方へ飛んでいく飛行機。

 

 今回は、そんな巨大な密室の中でおこる事件について、

書かれた本を紹介します。

 

殺人現場は雲の上 (光文社文庫)

東野圭吾「殺人現場は雲の上」

 

今で言うキャビンアテンダントが、スチュワーデスと呼ばれていたとき。

1980年代後半に書かれた話です。

 

trafficnews.jpこの本は、新日本航空の同期である早瀬英子と藤真美子、

通称エー子とビー子が事件を推理する短編集です。

2019年には韓国でも翻訳されたとか。

 

作者のきょうだいが客室乗務員をしていたそうなので、

不審な電話がかかってきたときの対応は

そこから取材したのかと思いました。

また、「デスとしても~」とか「新日航のデス」という言い方や、

副操縦士のコウ・パイという呼び名(Co-Pilotというそうです)も

内輪の言葉という感じで、違う職場を見るようでした。

 

 探偵役の2人、エー子とビー子の関係を

お互いの欠点を補いあって・・・とは言いにくいが、

お互いにない部分を求めあっているというところだろうか。

と描写されていたところが好きでした。

30年たった後の、貫禄のついた二人を

どこかで書いてくれたら嬉しいですね。

 

月の扉 (光文社文庫)

石持浅海「月の扉」

 

3人の男女が、那覇空港で飛行機をハイジャックする。

目的は、尊敬する「先生」を警察署から解放するため・・・

 

乗客の青年、通称座間味くんが、

飛行機の中で起こった密室殺人の謎を解き明かします。

 

www.bookbang.jp

ハイジャックを舞台にした話は、

この漫画にも出てきます。

犯罪交渉人 峰岸英太郎 1

記伊孝「犯罪交渉人 峰岸英太郎

 

www.mangaz.com

この手の犯人っていうのは

外ヅラは冷静を装ってますが

心の中は言いたいことでいっぱいなんですよ・・・・・・

 

そういう犯人の隠れた動機を探り出すことが・・・・・・

僕ら交渉人の仕事なんです

 

今はもう退役した飛行機、

ボーイング747ー400Dの中で起こるハイジャックから

物語ははじまります。

中心にいるのは、タイトルにあるように犯罪交渉人。

誰も死なせずに事件を解決することを目標に、

犯人とコミュニケートしていきます。

 

honz.jp「交渉人」で検索していたら、こういった本もありました。

興味深いです。

恋愛について書かれた本を読みました。~三浦しをん「愛なき世界」、 川上弘美「大好きな本 川上弘美書評集」、ニコルソン・ベイカー「もしもし」

現代社会の人間関係を描いたものには、途中で辛くなって

読み進めるのに体力が必要だったりする本もあるのですが、

今回紹介する本はそういったストレスを感じませんでした。

そしておもしろい。

 

愛なき世界 (単行本)

三浦しをん「愛なき世界」

洋食屋「円服亭」の見習い、藤丸陽太は、

植物学研究者をめざす本村紗英に恋をした。

 

語り手はこの2人なのだけど、

単純に2人が恋をする話ではないところが好きです。

時々、やたらずかずか入ってくることを親愛とするような人がいますが

そんなことにはならず、お互いが距離感を大事にしながら

少しづつ親しくなっていくけれど、それがメインにはならない。

 

藤丸の周りには、洋食屋の店長が作る料理の描写があり、

本村の周りには、同じ研究室の仲間や教授がいる。

そこには、それぞれの物語がある。

 確かに恋愛小説なのだけど、それだけでは終わらないしはじまらない。

そこが好きです。

book.asahi.com

川上弘美書評集 大好きな本 (文春文庫)

 川上弘美「大好きな本 川上弘美書評集」

books.bunshun.jp「愛なき世界」のすぐあとにこの本を読んだので、

この本に収録された書評の中でも、

愛について書いているところが目につきました。特に、

 

いつも思うのだが、なぜ多くの人は恋愛などという

しちめんどくさいことをするのか。恋愛なんぞに背を向けて

平穏で静謐な生活を送っていれば、

どれだけ効率的な人生を送れることか。

しかしなぜか人は恋愛をする。必ずしも生殖を目的とするわけでもなく、

合目的的にいえばまったく無駄に、どんどん恋愛をしてしまうのである。

(木村義志「机の上で飼える小さな生き物」)

 

愛することは、普遍的でありながら、それぞれの営みにおいて

差異の大きい事柄だから、愛の物語を読むのは面白い

(実際に人を愛することが面白いとは限らないけれど。

人を愛することって、じつに難しい。愛は美しく素晴らしい、

さああなたもどんどん人を愛しなさい、と簡単に言う輩を見ると、

わたしは思わず石を投げつけたくなる)。

(ターハル・ベン・ジェルーン「最初の愛はいつも最後の愛」)

 

この小説の中に書かれている愛は、見えるだけでなく、

さわれる感じがする(夏石鈴子「夏の力道山」)

 

などが印象に残ったのですが、

 これに紹介されていた1冊がこちらです。

 

もしもし (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

ニコルソン・ベイカー「もしもし」

 

互いに見知らぬ男女が交わす、電話ごしの会話だけで進む物語。

指一本触れずに、声を荒げることもなく、

自分の性癖をさらしあう。

ameblo.jp切ろうと思えばいつでも切れる電話の中で会話をしていくのは、

ちょっと気持ち悪くもあり、通じ合うようなところもあり、

その場所、その相手でしかなりたたないような時間と

お互いのファンタジーが否定されずに共有されていくことの

充実感があって、 満たされた気分が残りました。

ドイツについて書かれた本を読みました。~多和田葉子「エクソフォニー 母語の外に出る旅」、白乃雪「ほのぼのドイツぐらし」、ヴェラ・レーンドルフ「ヴェルーシュカ 変容」

ドイツといえば。

オクトーバーフェスタ、ソーセージ、バウムクーヘン

アインシュタイン、グリム兄弟、手塚治虫の「アドルフに告ぐ」。

ケストナーの児童文学。

中学校の担任の先生が、大学でドイツ語をとっていたということ。

(吐き出すような発音、と言っていたのを覚えています)

私にとってのドイツのイメージで、

ぱっと出てくるものはそんなところです。

そんなドイツについて書かれた本を読みました。

 

エクソフォニー――母語の外へ出る旅 (岩波現代文庫)

多和田葉子「エクソフォニー 母語の外に出る旅」

 著者はドイツ語と日本語を使って創作活動をしています。

yokotawada.deタイトルの「エクソフォニー」とは、ドイツ語で

母語の外に出た状態のことをいうそうです。

移住や移民から、しかたなく母語とは違う言葉を使うのではなく、

服を選ぶように使う言葉を選ぶこと。

 

第一部は、「母語の外に出る旅」

第二部では、「実践編 ドイツ語の冒険」として、

聞きなれない言葉に身を任せること、

新しいシンフォニーに耳を傾けることが書かれています。

 

セネガルダカールで、パリで、奥会津で、ソウルで・・・

 様々な国を訪れた著者が体験して、感じた出来事の中で、

言葉は壊れていくことでしか新しい命を得ることができない。

 というところが印象に残りました。

以前、どこかで

インターネットがなかったら、「検索」という言葉は

図書館での「蔵書検索」くらいでしか使われない、

マイナーな言葉だったんじゃないか、という文章を読みました。

もともとの意味から離れ、新しい言葉が生まれるのは

それまでになかった今を生きているからかもしれませんね。

 

違う言葉どうしの接点や、思わぬところでの発見もおもしろく、

間を置いて何度も読み返したくなる本です。

 

ほのぼのドイツぐらし。 ~国際結婚3年め、南ドイツの田舎町で新生活はじめました~

 白乃雪「ほのぼのドイツぐらし」

 

www.comic-essay.com 馬車が現役で走る、田舎町での夫婦生活。

窓からアルプスが見える場所で送る日常が描かれています。

ドイツの食材で日本料理を作る

「白米からは逃げられぬ」も、最近発売されました!

comic-days.com

 

この「ほのぼのドイツぐらし」の中で、

作者が個人的にかわいいと思うドイツ語として、

「クッシェルティア」という単語が紹介されていました。

意味としては動物のぬいぐるみのことで、

Kuscheltier と書きます。

tier、は動物。

Kuschel、は愛情をこめて体をよせる、みたいな意味があるそうです。

うん、かわいい。

 

家族でドイツで暮らして、妻が日本語で漫画を描いていて、というと

小栗左多里もそうですね。

www.comic-essay.com同じドイツとは言っても、

場所が違えば環境も違うし、まわりの人も違う。

もちろん描く絵も違う。

それぞれ違って、おもしろいです。

 

そして最近読んだ、印象的な本を。

ヴェルーシュカ―変容

ヴェラ・レーンドルフ「ヴェルーシュカ」

 

www.newsdigest.de

ヴェラ・レーンドルフは、ドイツ初のスーパーモデル。

表紙のように自分の体にペイントを行い、背景と一体化します。

さびた鉄骨、こけむしたテーブル、崩れかけた壁など、

一体化する背景は、朽ちていくもの。

体の曲線と、他の何かの境目があいまいになり、

どこかに消えていくような気持ちになりました。

自叙伝があるそうですけど、翻訳されないかなあ。