唐桃の読んだもの。

読んできた本や漫画を、徒然に紹介していきます。

夢枕獏の「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」と、そのコミカライズを読みました。

先日、映画「空海ー美しき王妃の謎」を、見てきました。

【映画パンフレット】 空海 KU-KAI 美しき王妃の謎  キャスト 染谷将太, ホアン・シュアン, 阿部寛, チャン・ロンロン, 松坂慶子, 火野正平,

 夢枕獏の原作「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」が

好きだったので興味を持ったのですが、

なるほどここを削って、ここを付け足して、

こういう風に変えたのか、という違いが面白く、

女性の衣装や髪型、

宮廷での宴の冗談みたいな豪華さや、幻術を見せるところなどは

大変きらびやかで、映像ならではの醍醐味を感じました。

 

中国では「妖猫傳」というタイトルで公開されているそうですが、

そのとおり、猫が大活躍する映画でもありました。

 

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 全4巻セット

とは言っても、ボリューム感があるのはやはり原作。

唐では無名の僧である空海が、どんなことをして、

どんな人と知り合い、どう認められていったか、ということも

小説としてしっかり書かれています。うーん、伝奇ロマン。

 

そして原作のコミカライズは、こちら。

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 壱 (カドカワデジタルコミックス)

 これは2013年に出版されたのですが、

得体の知れない企みごとの薄気味悪さと、

飄々とした空気をまとう空海が、想像以上に面白かったです。

映画ではなかったことにされている人物も出ていて、

続刊が出るなら、 ぜひ読みたいところ。

カエルに興味がわいてくる本を読みました。~草野心平「蛙のうた」、松橋利光・高岡昌江「ずら~りカエル ならべてみると・・・」、高山ビッキ「かえるる カエルLOVE111」

るてえる びる もれとりり がいく。

ぐう であとびん むはありんく るてえる。

 

ではじまる詩を知ったのは、

北村薫の「スキップ」ででした。

 それが草野心平と結びついたのは、ずっとあとのことです。

 

蛙のうた―草野心平詩集 (美しい日本の詩歌)

この福島生まれの詩人は、

カエルを題材とした詩をたくさん書いているのです。

最近読んでおもしろかったので、

今日はカエルについて書かれた本を紹介します。

 

学生のころは、ちょっと自転車をこいでいると、

道の左右に田んぼが広がっていました。

だからカエルの鳴き声を聞いたことはよくあるし、

浴室のガラスに小さいのがひっついていたこともあるのですが、

こんなにたくさんのカエルが、日本にいるとは知りませんでした。

ずらーりカエル ならべてみると…

日本に生息する43種類のカエルが、大集合。

足や目など、

それぞれの違いも比べられるようになっています。

 

また違ったかたちで、カエルの魅力を教えてくれるのは、こちら。

かえるる カエルLOVE111

 基礎知識からはじまり、

カエル好きな人々、いわゆるカエラーやカエルグッズ、

鳥獣戯画に描かれたトノサマガエルや

(兎を投げ飛ばしているやつです)

文化史など、「意外痛快愉快、そして不可解」なカエルについて

楽しみながら知ることができます。

ハングルについて書かれた本を読みました。~荒川洋治「ぼくのハングル・ハイキング」、茨木のり子・金裕鴻「言葉が通じてこそ、友だちになれる」、四方田犬彦・金光英実「ためぐち韓国語」

 語学というのは、習得を目ざすことではないという気持ちがある。

しゃべれるとか、話せるとか、

そんなことはどうでもいいとはいわないが、

学習をとおしてその人がふれていくもの、

みずからにおいて見出したものが

重要だという点は忘れたくない。

ぼくのハングル・ハイキング (五柳叢書)

 と、詩人である著者は書いていました。

この本は、主に著者や他の人の詩歌と

現地でのインタビューで成っています。

 

出版されたのが昭和63年なので、今とはまた違うのでしょうが、

少しだけ韓国について、

そこに住む人について親しくなることができた気がしました。

 

詩人とハングル、といえばこんな本もありました。 

言葉が通じてこそ、友達になれる

 茨木のり子は詩人で、

50歳をすぎてからハングルを習い始めたそうです。

 

この本は、言葉を習った金裕鴻先生との対談で、

2つの国の気質や考え、「あたりまえのこと」についての

違いなどを、おもしろく読みました。

 

その中の

「韓国の人に比べると日本人はみんな自閉症のように思える」発言に

そこまでかと驚いたのですが、

思えば書店でも、コミュニケーションやその重要性について

言及されている本をよく見る気がします。

多くの本で話されているということは、

そこが弱いということでもありますよね・・・

 

日本にしても韓国にしても、(あるいは他の国にしても)

いいところもそうでもないところも、

そこに合う人も合わない人もいるということなのかもしれません。

そして言葉はつねに変化するもの・・・といえば、

 

 言葉はつねに他所から運ばれてきます。

誰もそれを留めることはできません。

純粋な言語というのも、この世には存在しません。

それを主張するのは、権力者と語学教師だけです。

 

と、こちらの本では書いていました。

 

ためぐち韓国語 (平凡社新書)

 「のむ もっちょ」は、かっこいい!

「ぺこっぱ」は、おなかすいた。

「ちぐ  もはぬんごや」は、今何してるの?

 

などなど、日常で使われるような言葉の、韓国語での紹介と

それについてのエピソードが、見開きで紹介されています。

ひらがなで書かれた読み方は、

口に出してみると不思議な気分になりました。

 

ちなみに、猫は「こやんい」で虎は「ほらんい」だそうです。

イスラエルに関わる本を読みました。~ナタリー・ベルハッセン/ナオミ・シャピラ「紙のむすめ」、大桑千花「エルサレム・クロック イスラエルの春夏秋冬」、浅暮三文「似非エルサレム記」

 イスラエル、とちょっと検索してみると

物騒なニュースがたくさん出てきますが、

それはあくまで一面で、

 美しいところ、楽しいところもたくさんあるのですよね。

今日は、そんな本を紹介します。

 

紙のむすめ

 

 これは、飯田橋近くにある印刷博物館での企画

「世界のブックデザイン」で知った、イスラエルからの絵本。

 白い紙から生まれたむすめが、素敵なものを

どんどん切り抜いていく話です。

 

切り絵の作者ナオミ・シャピラは、

切り絵を40年以上も極めてきたそうで、

繊細な切り絵と、奥行きのある構成にはみとれてしまいます。

 

エルサレム・クロック―イスラエルの春夏秋冬 (私のとっておき)

 

イスラエルでの風景を教えてくれたのがこちら。

10年くらいエルサレムに住んでいた著者が送る、

1年間の祝祭と日常の紹介です。

 

イスラエルの桜とも呼ばれるらしいアーモンドの花、

死海、水タバコのカフェ、市場、拾った猫、

新年の祭ロシュ・ハシャナ、ユダヤのクリスマスハヌカ・・・

たくさんの写真がきれいで、眺めていて楽しいです。

 

また、小説では浅暮三文の「似非エルサレム記」がおすすめです。

似非エルサレム記

 聖地エルサレムが、意志を持ち動き出す・・・という話で、

場所の力、そこ自体が持つエネルギーを感じました。

歌や句の本を読みました。~正岡子規・天野祐吉「笑う子規」、倉阪鬼一郎「怖い俳句」、西加奈子・せきしろ「ダイオウイカは知らないでしょう」

2018年、初めての更新です。

今年もいろんな本を読んでいきたく思いますので、

よろしくお願いします。

 

最近は、短歌や俳句の本を読むようになりました。

とはいえ詩の歴史は長いので、

それだけではおもしろさがわからないものもあります。

わかりやすい説明も加えている本を紹介します。

 

笑う子規 (ちくま文庫)

笑う子規 (ちくま文庫)

 

正岡子規は、夏目漱石と同級生。

生涯で2万4千あまりの俳句を詠んだそうです。

その中でもおかしみの強い句、笑えるものを選んで

紹介しているのがこの本。

 

前書きによれば、俳句の「俳」は、

「おどけ」や「たわむれ」という意味だそうです。

たとえば有名な、

柿食えば鐘がなるなり法隆寺

で、柿を食べることと鐘が鳴ることには何の関係もないのに

結びつけるおもしろさ。ズレや意外性の楽しさ。

そういうものを、二物衝撃とか取り合わせなどというそうです。

 

 

怖い俳句 (幻冬舎新書)

怖い俳句 (幻冬舎新書)

 

ここでは「怖い」をキーワードに集められた古今の俳句と、

作者による解釈が収められています。

あの作家はこんな俳句を呼んでいたのか、という

発見の面白さも、初めての出会いの楽しさもたくさんありました

 

 

 14人のゲストから出されたお題を用いて、

2人の著者が短歌を詠む題詠短歌。

通して読むと、それらしい形ができていくのがよくわかります。

言葉を扱う人が作る句は、レベルが高い・・・と、

感じ入ることもしばしば。

 

お題メーカーなどでもいえることですが、

自分では普段使わないような言葉を使ったり、

ある程度方法を限定された中で作っていくのは面白いですね。

夏目漱石の本を読みました。~いとうせいこう×奥泉光「漱石漫談」、夏目漱石「行人」、香日ゆら「先生と僕」

2017年は夏目漱石生誕150周年だそうで、

いろんなところでそれにちなんだイベントが行われていました。

この本も、その企画として出版されたものです。

 

漱石漫談

漱石漫談

 

 

 この本の著者2人は、定期的に

「文芸漫談」というライブイベントを行っています。

あらすじをたどりつつ、ツッコミどころがあったら存分に

突っ込んで、いいところは褒めちぎる。

こういう読みもあるのか、と興味をかきたてます。

 

この本では、タイトルどおりに夏目漱石の小説について話していて、

これをきっかけに「行人」を読み返しました。

初めて読んだときは、話の筋を追うだけで精一杯で、

内容を楽しむ点から言ったら、初めて読むようなものでした。

 

 「行人」は「こころ」の前にかかれた小説だそうで、

人物関係にもそれを思わせるものがあります。

行人 (新潮文庫)

行人 (新潮文庫)

 

 

ディスコミュニケーションの問題は、漱石の小説に必ず出てくる問題」

と、漱石漫談でも書かれていました。

夫婦でもきょうだいでも、わかりあえない。

そのもどかしさであったり、いらつきであったり、

また、伝えることもしないで不満に思うのは傲慢じゃないかっていう

ことだったり、いろんな視点から読める余地があるから、

100年たっても読まれているのだと思いました。

 

本筋とは関係ないのだけど、印象に残ったところに、

語り手の二郎がお見合いみたいなことをするシーンがありました。

まあ当時のお見合いだから直接話すわけでもなく、

姿をちらちら見るようなものなのですけど、

後でそれを親に知られて、その家の財産についてとか、

困った親戚はいないかとか、

悪い病気の血筋ではないかとしつこく聞かれてうんざりする・・・

という。

そういうことは100年前からのあるあるだったのだなあ、と

妙に感慨深く思いました。

 

そして夏目漱石、いや金次郎については

こちらを読むといっそう楽しく知ることができます。

 小説家の夏目漱石と、その周りの人々についての

エピソードが中心なのですが、

英語の夏目先生であったり、

同じ学校の金次郎であったり、

あるいは夫や親であったりと、

いろんな立場の「漱石」を見られます。

ミステリーについて紹介する本を読みました。~有栖川有栖「ミステリ国の人々」、東理夫「ミステリ亭の献立帖」

ミステリ国の人々

ミステリ国の人々

 

私は常々、ミステリを語るためのより的確で新しい表現がもっとあればいいのに、と思っている。もちろん、そんな表現を引き出す力のある作品を書きたい、とも。

 

探偵、語り手、犯人、通りすがり。

面白いキャラを通して、面白い作品や作家を紹介している本です。

ジャンルはもちろん、幅広いミステリー。

文章はもちろん、添えられたイラストも素敵なのです。

 

これまで読んだことのある本にはそうだったなあと頷いたり、

そうだったかな、と読み返したくなったり。

知らない本なら読んでみたくなります。

 

ミステリ亭の献立帖

ミステリ亭の献立帖

 

52のミステリーに出てくる食事シーン。

そのレシピや食事のエピソードを、

小説の内容と一緒に紹介したり作ったりしています。

 ミステリーだけではなく、食べ物についての感じ方も書かれていて、

興味が沸いてくる本がたくさんありました。