唐桃の読んだもの。

読んできた本や漫画を、徒然に紹介していきます。

ミステリーについて紹介する本を読みました。~有栖川有栖「ミステリ国の人々」、東理夫「ミステリ亭の献立帖」

ミステリ国の人々

ミステリ国の人々

 

私は常々、ミステリを語るためのより的確で新しい表現がもっとあればいいのに、と思っている。もちろん、そんな表現を引き出す力のある作品を書きたい、とも。

 

探偵、語り手、犯人、通りすがり。

面白いキャラを通して、面白い作品や作家を紹介している本です。

ジャンルはもちろん、幅広いミステリー。

文章はもちろん、添えられたイラストも素敵なのです。

 

これまで読んだことのある本にはそうだったなあと頷いたり、

そうだったかな、と読み返したくなったり。

知らない本なら読んでみたくなります。

 

ミステリ亭の献立帖

ミステリ亭の献立帖

 

52のミステリーに出てくる食事シーン。

そのレシピや食事のエピソードを、

小説の内容と一緒に紹介したり作ったりしています。

 ミステリーだけではなく、食べ物についての感じ方も書かれていて、

興味が沸いてくる本がたくさんありました。

 

仙台が舞台の本を読みました。~重野なおき「政宗さまと景綱くん」、伊坂幸太郎「仙台ぐらし」

今年は伊達政宗生誕450周年、ということで

仙台を中心ににぎわっていましたが、

この機会にと私も行ってきました。

 

白石城、松島の円通院、仙台市内の瑞鳳殿に博物館。

行きたいところはもっとたくさんありましたが、

今回行けたのはこのあたり。

テーマを決めての旅行というのもおもしろいものですね。

 

で、伊達政宗といえば最近読んでいるのがこちら。

政宗さまと景綱くん 1 (SPコミックス)

政宗さまと景綱くん 1 (SPコミックス)

 

 作者は現在進行形で、

信長の忍び」「黒田官兵衛伝」「真田魂」など、

戦国時代を舞台にした4コマ漫画を連載しています。

笑いどころもたくさん作りつつも、

基本的には史実どおりに、丁寧に進んでいき

 シリアスなところはしっかりシリアス。

人物もクロスするので、一冊読んだら他の漫画も読みたくなります。

 

仙台といえば、こんな本も。

仙台ぐらし (集英社文庫)

仙台ぐらし (集英社文庫)

 

 仙台で暮らす作者の日常を書いたエッセイと、短篇が1つ

収められています。

 

私たちの日常で、ドラマチックなことはそうそう起こりませんが、

それは小説家にしても同じこと。

でも、それを面白い、趣きのあるものとして読ませるのは

筆力というものなのだろうなあ。

 

2005年から2012年に書かれたものなので、

震災についても書かれており、その中で

「楽しい話を書きたい」と思うまでが印象に残りました。

私も、あのときのことを

忘れちゃいけないな、と改めて思いました。

 

仙台文学館にも少し寄ってみたのですが、

思った以上に、ここを舞台にした作品が多いことを知りました。

少しづつ、読んでいきたいと思います。

中をのぞく、本を読みました。~こうざいきよ「財布の中身」、ヒヨコ舎「本棚」、森皆ねじ子「人が病気で死ぬワケを考えてみた」

財布の中、本棚の中、服の中、体の中。

むき出しにしてお金を持ち歩く人はそういませんし、

服で隠さないといけないところを出していたら110番です。

 

隠すのは、大切なものだし

人にみせびらかすものではないから。

そして、とても個人的なものだから。

 

今日は、そんな「中を覗く」本を紹介します。

 

財布の中身―inside of your secret life (ちくま文庫)

財布の中身―inside of your secret life (ちくま文庫)

 

老若男女いろんな人が使っている

お財布の中身を、写真で紹介しています。

 作者が直接頼んで、見せてもらった中身は

その人の生活そのもの。

 

もちろん持ち主の写真は載っていないのですけど、

お財布の中身を見ることは、実際に顔を見るよりも

内面を知ることができるような気がしました。

 

本棚

本棚

 
本棚〈2〉

本棚〈2〉

 

 作家に漫画家、いろんな作り手の本棚を紹介しています。

あの人はこんな本棚を使っているのか、と思ったり、

自分と同じ本を持っていると嬉しくなったりしました。

収められているものはもちろん、

分量や置き方にも、個性は出るものですね。

 

「頭ではなくはらわたで読みたいといったところでしょうか」

と、この中で言っていた人がいるのですが、

私もそういう本を見つけていきたいと思いました。

 

人が病気で死ぬワケを考えてみた

人が病気で死ぬワケを考えてみた

 

みんな忘れてるだろうけど

人間って死ぬのよ

 

感染症・がん・生活習慣病と、大きく3つの章に分けられて、

それぞれの病気について説明しています。

 

病気になるとはどういうことか。

なにが、どういう風に体に影響するのか。

 

手書き文字とイラストが、わかりやすい説明と相まって

生物のおもしろい授業を聞いているような気分です。

そういうことだったのかー、と驚きとともに楽しめました。

岩合光昭の本を読みました。~「ふるさとのねこ」「岩合光昭の大自然100」

先日、

 劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き 

コトラ家族と世界のいいコたち」を見に行きました。

 

津軽のりんご農家で

春に生まれた子猫の目が6日目に開き、

みるみる大きくなって冬を越す。

りんごの花や実、樹のすぐそばで。

 そんな情景が撮られています。

ふるさとのねこ

ふるさとのねこ

 

この写真集を読んでいたときには、

映画になるなんて思いませんでした。

  

写真では一枚一枚をじっくり見られ、

映画では猫の動き、生まれたての高い声や動きが大画面で見られて、

それぞれ違うおもしろさがありました。

 

生きている姿はもちろんかわいいのですけど、

子猫が一年で大人になって、子供を生んでいなくなっていくことの

切なさのようなものも感じました。

 

また、ねずみをとるシーンに、猫が獣だということが実感されました。

爪も牙も飾りじゃないし、冬毛は寒いところでの実用品なのだと。

 

また、映画では世界のいろんなネコの姿も見られます。

浜辺でカニをとろうと熱心に穴を掘っていたり、

川の表面がきらきらしているのが気になるのか、

石の上に乗ってそっと川面に触れたり。

時間はそれほど長くないけど、エンディングまで楽しめます。

 

でも、岩合光昭が撮るのは猫だけじゃないんですよ。

たとえばこちら。

岩合光昭の大自然100

岩合光昭の大自然100

 

 タンザニアの草原。

東の地平線から西の地平線まで続くヌーの列。

ハワイのザトウクジラ、南極のペンギン、長野のサル、世界のネコ。

著者が世界中で撮ってきた写真から選ばれた100枚が、

撮影したときのエピソードと一緒に収められていて、

その数々に息を呑みました。

猫と俳句の本を読みました。~堀本裕樹・ねこまき「ねこのほそみち 春夏秋冬にゃー」、柳沼吉幸「寺ねこ」、倉阪鬼一郎「猫俳句パラダイス」

俳句のよさは、写真のようなものだと思います。

きりとり方や撮るタイミング次第で、

見慣れた風景でも、初めて見るような新鮮なものとして写ります。

 

また、思いも寄らぬ言葉の組み合わせで、

イメージが広がることもあります。

 

そんな俳句の中でも、今回は猫を詠んだ俳句の本を紹介します。

 

ねこのほそみち ―春夏秋冬にゃー

ねこのほそみち ―春夏秋冬にゃー

  • 作者: 堀本裕樹,ねこまき(ミューズワーク)
  • 出版社/メーカー: さくら舎
  • 発売日: 2016/04/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 猫を詠んだ俳句を、俳人の堀本裕樹が選んで解説し、

ねこまきが漫画を描く。

ときにほのぼの、ときに物悲しい、さまざまな姿の猫がみられます。

 

悲しみのかたちに猫を抱く夜長  (日下野由季)

などに、はっとするものを感じました。

 

寺ねこ

寺ねこ

 

鎌倉、川越、浅草、横浜・・・

淡海うたひの俳句とともに、あちこちのお寺にいる猫を撮っています。

 

雪女飼ひたる猫も雪の色

 という俳句と同じページにある、

遠くを見つめるような白猫の写真が印象に残りました。

 

猫俳句パラダイス (幻冬舎新書)

猫俳句パラダイス (幻冬舎新書)

 

 

手触りや膝にのる感触。

いるのかいないのかわからないところ、不思議なところ。

耳や肉球、目の光。

あらゆる場所に存在する猫の、

猫づくし俳句アンソロジーです。

 

アンソロジーのいいところは、思わぬ出会いがあるところですね。

黒猫の子のぞろぞろと月夜かな(飯田龍太)

卯波という大きな猫をさわりにゆく(永末恵子)

など、楽しい句がたくさんありました。

ことわざについての本を読みました。~エラ・フランシス・サンダース「誰も知らない世界のことわざ」、のり・たまみ「へんなことわざ」

誰も知らない世界のことわざ

誰も知らない世界のことわざ

 

「言葉は、私たちの頭の中に広がる広大な概念の世界です。

言語の数だけ、それぞれの世界観があり、歴史や文化に根ざす

表現があることを、この本を通して強く感じました」

と、書かれていたのが印象に残った本でした。

 

この本は、あちこちの国のことわざを、

イラストと一緒に書いたものです。

ドイツの「あそこでクマがおどっているよ」

(そこはにぎわっている魅力的な場所だ)や、

ラトビア「小さなアヒルを吹き出す」

(嘘をついている)など、広がるイメージがおもしろかったです。

 

日本からは「猫をかぶる」が紹介されていたのですが、

説明に「日本人は、猫となるとちょっと夢中になってしまうようです」

とありました。フランスの方に言われるほどでしたか。

 

日本のことわざと共通するものもあり、

話す人々が広がっていくにつれて、変化していく言葉や、

地球のあちこちを移動していく言葉。

それらの長い年月を思いました。

 

世界のことわざと言えば、こんな本も。

へんなことわざ 「へんな」シリーズ (角川文庫)

へんなことわざ 「へんな」シリーズ (角川文庫)

 

 夫・のりと妻・たまみの2人で書いた本。

世界のことわざと一緒に、豆知識や雑学もたくさん書かれています。

イギリスの「柔らかい舌が骨を砕く」

(悪口や皮肉、軽蔑などの言葉が人の心を激しく傷つける)

が、印象に残りました。

 

ところで、新しい言葉は日々生まれていますが

新しいことわざというのも生まれているのでしょうか。

石についての本を読みました。~山田英春「不思議で美しい石の図鑑」、宮田珠己「いい感じの石ころを拾いに」

めのう、水晶、柘榴石、蛍石、ぶどう石等々各種鉱石。

サメの歯、アンモナイトなどの化石に隕石。

 

それぞれ不思議な色や形で、

綺麗にカットされて磨かれたものとは違う、生々しい魅力があります。

自然が偶然に生み出したものが、こんなにおもしろくなるなんて。

秋葉原でもミネラルマルシェが開催された今週は、

鉱石についての本を紹介します。

 

不思議で美しい石の図鑑

不思議で美しい石の図鑑

 

著者は、書籍のデザインを専門に行うグラフィック・デザイナー。

めのうのコレクターとしても世界的に有名だそうです。

 

この本は、石の模様のバラエティを紹介している図鑑で、

自然から生まれたものの、あまりの美しさに息を飲みました。

この中に、石には「複雑で、有機的で、絵画的な魅力」 があると

書かれていたことが印象的で

「自然界には、直線は存在しない」という言葉を思い出しました。

 

 

いい感じの石ころを拾いに

いい感じの石ころを拾いに

 

 いい感じの石。

それは手ざわりも色合いも様々だけど、自分にはその感じがわかる。

見てさわって、これはいい、と思う。

 

これは、そんないい感じの石を拾いに旅をして、

石を愛する人たちに会いにいく本です。

この中にも、上記で紹介した山田英春さんが登場します。

 

他にもアフリカ専門の旅行会社「道祖神」の人にインタビューをしたり、

ナミビアには、きれいな石がたくさんあるそうです)

ミネラルフェアのことを紹介したりしていて、

 

 自然ってすごいなあ、石っておもしろいなあ・・・

と小学生のような感想を持ちました。