唐桃の読んだもの。

読んできた本や漫画を、徒然に紹介していきます。

見ても楽しい、和菓子の本を読みました。~君野倫子「わくわく ほっこり和菓子図鑑」、春日一枝・名久井直子「東京 和のおやつどき」、猪本典子「イノモト和菓子帖」、チャイ「おかしなとり すいーとり」

 家の近くにある小さな和菓子屋さんにも

桜もちが並び、お花見のお供として楽しんでいます。

 

それにしても、餡を生地に包む、あるいは甘い生地を形にするという

シンプルといってもいい過程から、

実に多くのバリエーションが生まれるものだと思います。

それを意識したのは、こちらの本でした。

 

わくわく ほっこり和菓子図鑑

わくわく ほっこり和菓子図鑑

 

 

100年以上の伝統あるものから、

 コンビニで売っている、3本一組の串団子まで幅広く紹介する、

和菓子についての楽しい図鑑で、

おいしいお茶のいれかたや、和菓子についてのQ&Aも、

豊富な写真で楽しめます。

 

東京 和のおやつどき

東京 和のおやつどき

 

こちらは東京都内にあるお店の紹介や、

和菓子作りの製作レポート、工場見学など。

写真はもちろん、イラストもかわいいのです^^

 「とらや」の羊羹や「うさぎや」のどらやきを、食べてみたくなりました。

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イノモト和菓子帖

イノモト和菓子帖

 

和菓子の魅力を存分に引き出しているビジュアルブック。

載せる皿、あしらう物、ライティングや角度・・・

ひとつひとつにこだわったらきりもなさそうですが、

私にも比較的簡単に買えて、食べられるものだということに

不思議な気分になりました。

鳥の形をしたねりきりは、まさにすいーとり。

 

おかしなとり すいーとり

おかしなとり すいーとり

 

「嘘」が印象に残る本を読みました。

今日は4月1日、

ツイッターなどでも、楽しい嘘が振りまかれています。

だから今日は、それにちなんで「嘘」が印象に残る

本を紹介します。

 

 

まず浮かんだのは、こちら。

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)

 

 「嘘つき!」

彼女は間違っている。僕はひとつしか嘘をつかなかった。

 

1970年、夏。

大学生の「僕」と友人の「鼠」、小指のない女の子の物語です。

 

「職業としての小説家」の中に、この小説を書き上げるまでのことも

書かれてていました。

「そうだ、僕にも小説が書けるかもしれない」という感覚と、

そこから書き始め、書き終え、もう一度書いて、応募して・・・という過程。

 

解決されない謎の含まれた物語ですが、

それについてはこちらでくわしく解釈されています。

村上春樹 イエローページ〈1〉 (幻冬舎文庫)

村上春樹 イエローページ〈1〉 (幻冬舎文庫)

 

 

職業としての小説家 (新潮文庫)

職業としての小説家 (新潮文庫)

 

 

 

続いて、こちら。

薔薇を拒む (講談社文庫)

薔薇を拒む (講談社文庫)

 

 施設で育った主人公は、陸の孤島にある屋敷で働き始めます。

秘密があるらしい同い年の同僚と、謎めいた住人、美しい令嬢。

穏やかな生活の中、陰惨な事件が起こり・・・

主人公がつきとおす嘘と、過ごす時間を思いました。

 「少しづつ足元が危うくなっていくような、物語ゆえのはかなさ」

(「あとがきのあとがき」から)

が好きな方はぜひ。

 

それから、こちらは嘘のように思えてもすべて実話。

嘘みたいな本当の話 (文春文庫)
 

 

「聞いたことのない音が聞こえた」「おばあさんの話」

「犬と猫の話」などをテーマに集められた、

誰かの身におきた数々の物語はおもしろく、

謎めいていて不思議で、ときどきぞっとします。

 

妖怪が出てくる本を読みました。

京極夏彦の「鉄鼠の檻」コミカライズを(今日)知ったので、

それにちなんで今日は妖怪の本を紹介します。

 

 

この本では著者が生物学者なだけに、語られる理論は説得力満載で

一つの生き物としての妖怪がしっかりとイメージされます。

 

ろくろ首の首がのびるなら、その仕組みはどうなっているのか。

ゴムのようにのびるのか? それともじゃばら状になっているのか?

人魚やケンタウロスのような生き物は、人間部分とそれ以外の部分が

どのようにつながっているのか?

 

妖怪の生態について、現代の知識を使って解析していく一冊です。

プロが本気でつく嘘は、おもしろい。

 

 

 こちらは、70以上の妖怪を紹介するコミックエッセイ。

生活の中にある不思議と妖怪を結びつけて描いています。

すぐそばにある怪。

 

京極夏彦との関連で言えば、小説にも取り上げられていた

姑獲鳥や塗仏、五位の光なども登場していますよ。

 

本を読む本を読みました。

 

時間のかかる読書 (河出文庫)

時間のかかる読書 (河出文庫)

 

振り返る人はたいていの場合、「振り返っている自分」に酔いがちで、見ているほうは「勝手に振り返れ」と言いたくもなる。大事なのは「成長」だ。人はいつまでも子どもでいるわけにはいかないのだし、成長し、社会化され、それと引き替えにべつのものを失う。あたりまえじゃないか。

 

 横光利一の短篇小説「機械」を、著者が読む。

11年2ヶ月という時間をかけて、読みつくす。

その過程を描いた本です。

こんなにこの話を味わい尽くした人はいないんじゃないだろうか。

 

 

小説に限らず、創作物はなんでもそうだと思いますが、「読む」(あるいは「見る」「聞く」)という行為を終え、作品が心の中に入ってきてからがむしろ本番というか、するめのようにいつまでも噛んで楽しめる。

一冊の本を読むという行いは、ある意味では、そのひとが死ぬまで終わることのない行いだとも言えると思うのです。

 

こちらで対象となるのは、ドストエフスキーの「罪と罰」です。

まずは読まずに、うろ覚えの記憶をたよりに4人が語り、

読んだ後に語る。

読書の楽しみは、読むということが前提としてあるわけですが

そうではない楽しさもあるのだな・・・と、可能性を感じました。

 

また読み返したくなってしまいました。

 

ピアノを奏でる本を読みました。

小説を読む、ということは音楽を聞くことに似ているかもしれません。

 ページをめくるたびに言葉のイメージがふくらんでいき、

おもしろい本を読んだなあ、と満足して息をつきます。

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

 

 ある国際ピアノコンクールの参加者と、

その周りの人を語り手として紡がれる「神と遊ぶ」ための物語。

 

建築だったり、美術だったり、何かしらのよさが、

見ただけではわからなくても

説明された文章でわかる、ということがあります。

それは、その文章を書いた人とイメージを共有することだと思います。

ピアノの大会ですから、ここで扱われるのはクラシック、

私の中で確たるイメージのない分野なのですが、

聞いてみたいと思うのは、この小説の中で生まれたイメージが

素敵なものだったからかもしれません。

 

キャラがかわいい、物語が楽しいで読み終わっても

それはそれで楽しいのですが、

関連するものについても、もっと知りたいと思うのは

もっと好きになりたいからなのだと思います。

 

 

ビビビ・ビ・バップ

ビビビ・ビ・バップ

 

こちらの舞台は、21世期末。

音響設計士兼ジャズピアニストの主人公が

依頼された仕事から始まる、世界をゆるがす一大事。

 

ジャズについてはクラシックと同じく、ほとんど知らないのですけど、

くるくると変わる視点についていくのが楽しく、

スウィングとはこういうものなのかと思いました。

 

そして、著者の他の小説を読むとつながるところがたくさんあって

これも一つの変奏曲のように感じられました。

 この本と他の本が、未来と今が、他の場所と混ざり会う楽しさ。

 

 そして、ピアノの漫画といえばこちらも。

ピアノの森(1) (モーニングコミックス)

ピアノの森(1) (モーニングコミックス)

 

 世界は、音楽に満ちているのだということが

実感できた気がします。

昆虫についての本を読みました。~西田賢司「ミラクル昆虫ワールド コスタリカ」、栗林慧「アリの目日記」

新しい発見をするたびに、情報は多様に変化していく。

秘密を解き明かすたびに、これまでのことが違っていた

ことに気づかされる。

だから、これまでに学んでいたことの上に学ぶのである。

 

ミラクル昆虫ワールド コスタリカ

ミラクル昆虫ワールド コスタリカ

 

著者は、未知の昆虫を探して研究を行う

「探検昆虫学者」として

中米コスタリカの森で研究を行っている人です。

 

この本は、そんなコスタリカで生きている

昆虫を紹介する写真集なのですが、これがまあ・・・すごい。

日本では見たことも、想像もしないような形や大きさ、生態や姿。

なにがどうしてそうなった、という不思議な気分は、これが

センス・オブ・ワンダーというものなのでしょうか。

 

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で、こちらは日本での写真です。

アリの目 日記

アリの目 日記

 

アリの視点、つまり地上3ミリほどの高さから世界は。

タンポポの綿毛が見上げるほど大きく、

抜け殻の中からみる向こう側が奇妙にぼやけて、

霜柱は氷河になる。

それでも空は同じように青くて、背景は鮮明で、

だんだん大きいと小さいの感覚が曖昧になっていきました。

 

 

きのこについての本を読みました。

きのこって、いいですね。

食べておいしいのはもちろん、じっくり見るとフォトジェニックで、

作り物のような感じもします。

 

とくに、スーパーではほとんど見ないようなきのこなら、尚更です。

 

少女系きのこ図鑑

少女系きのこ図鑑

 

 この本は、著者が卒業製作として作ったものがもとになっているそうです。

やわらかな色で描かれたきのこと、そこに寄り添う少女。

少女ときのこ、というか少女がきのこ。

きのこをモデルにした傘やスカートは、実際にあるのではないかと思いました。

 

光るキノコと夜の森

光るキノコと夜の森

 

夜に光る生き物といえば、ホタルがまずあげられますが

光るきのこも、思ったよりたくさんの種類があるものです。

 

ブナの木に群生するツキヨタケ、やんばるのホシノヒカリタケ、

れんこんのような、穴が開いているかたちがおもしろいエナシラッシタケ・・・

でも、写真と実際に見るのでは違いがあるようで・・・

写真が良いほど、実際に目で見たときの光はどのようなものなのだろうと思います。

 

世界の美しいきのこ

世界の美しいきのこ

 

 

世界各国の、きのこのフォトジェニックさを感じられます。

どうしてこんなかたちなのだろう、という不思議さと、

そこはかとない不気味さ。

色で言えば、ベニヒガサの赤、ドクツルタケの白、タマゴタケの黄色。

形で言えば、砂糖菓子のようなシロホウライタケや、ぶわっと傘が広がるハナビラタケ・・・

 

きのこの世界も奥が深い。

いずれ、きのこ狩りにも挑戦してみたいものです。